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□主な記事□
・製品開発/関西電力・新潟原動機、川崎重工業
・インタビュー/導入の拡大に向けて
速水英樹氏(日本ガス協会 エネルギーシステム部普及計画グループ兼ガス冷房普及センター マネジャー)/平田賢氏(芝浦工業大学 学長)
・導入事例/シャープ亀山工場、初富保健病院
・Jパワー/海外で発電事業を積極的に展開
エネルギーを高効率利用するコージェネレーションシステムは着実に普及が進み、日本コージェネレーションセンターによれば、全国の累積導入件数は2005年度末で約7000件、設備容量は約860万`hに達しており、内燃式では、すでに02年に世界一の導入量となっている。
しかも、従来は工場やホテル、病院、店舗など産業用・民生用の大規模施設で使われてきたが、最近では小型のガスエンジンや燃料電池によるシステムが実用化されるなど、家庭にも浸透し始めている。
このように、今後も普及拡大が見込まれるコージェネだが、その一方で、原油価格の高騰により、油類を燃料とするシステムの設置が大幅に減少するなど、新たな課題も見られるようになっている。
□主な記事□
・太陽光発電の導入事例/昭和女子大学、東京ガス
・インタビュー/さらなる普及のために
黒川浩助氏(東京農工大学大学院教授)/新国禎倖氏(新エネルギー財団太陽光発電部兼FT事業部部長)
・電力中央研究所/エネルギー未来技術フォーラム開催
・東京電力/「地域とともに 原子力発電所の人たち -1- 柏崎刈羽」
日本国内における太陽光発発電の普及は、国の住宅用設置補助制度や電力会社による余剰電力の買取制度などにより着実に普及が進み、累積導入量では99年に米国を抜いて以来世界一の座を保ってきた。
しかし、ここ数年はドイツを始めとする欧米や中国など、諸外国でも普及が進んでおり、04年には年間の導入量で、05年には累積導入量でもドイツに抜かれることになった。
これまで太陽光発電に関して、わが国が生産面でも導入面でも世界をリードしてきたことや、地球温暖化防止への貢献などを考えると、日本が導入量でも再び世界一になることは意義ないことではないだろう。
今後、わが国で太陽光発電の技術開発や普及が一層飛躍していくための方途を探った。
太陽光発電協会(JPEA)によれば、2005年末の日本の累積導入量は142万2千`h。これに対しドイツは142万9千`hで、わずかにドイツが日本を上回った。ドイツで導入が急増しているのは、04年に再生可能エネルギー法による太陽光発電からの買取価格を大幅に引き上げたためだ。日本でも電力会社に新エネからの電力の買い取りを義務付けるRPS法の見直し作業が始まっているが、そうした動きとは別に着実に普及が進んでいるのも事実である。しかも、これまで導入を牽引してきた住宅用の設置補助制度が昨年度で終了したにも関わらず、出荷状況を見ると、今のところその影響はなさそうだ。ただ国の新エネ導入目標で示されている数値の達成や、さらなる導入拡大のためには技術開発面での取り組みが必要である。
■世界的な需要増
単年で見ると、ドイツの
03年に15万3千`h、04年に36万3千`h、05年の63万5千`hという急速な伸びが目立つが、日本でも03年に22万2800`h、04年27万2400`h、05年29万`hと着実に伸びており、米国やオーストラリア、スペインなどでもここ数年、単年の導入量が前年のそれを上回るようになっている。
その結果、世界全体での単年の導入量は05年末に109万3千`hと100万`hを突破し、累計では370万`hに達した。
この世界的な太陽光発電システムの旺盛な需要増を支えているのが日本のメーカーだ。
世界の太陽電池の4分の1を生産(05年の生産量は42万8千`h)する最大手のシャープは、奈良県の葛城工場の太陽電池セル(太陽電池の機能を持つ最小単位)の生産能力を10万`h増強し、今月から本格生産を開始。これにより、同工場の年間生産能力は世界最大の60万`hとなった。
世界3位の京セラは昨年、太陽電池モジュール(セルをつなぎあわせたもの)の生産の「世界4極体制」を構築した。三重県の伊勢工場のほか、中国・メキシコ・チェコで工場を稼働させ、日本・中国・米国・欧州という4つの主要市場の需要に対し、迅速に対応できる供給体制を確立している。
世界4位の三洋電機もメキシコとハンガリーに工場を建設して日米欧市場への供給体制を整備しているが、さらに今年6月には、2010年度に太陽電池事業を、05年度の3倍以上の1800億円事業へと拡大することを目指す「HIT太陽電池 次世代プログラム」を発表した。
そのほか、世界5位の三菱電機など他のメーカーも生産体制の拡大などを図っている。
■価格を下げる
国内ではこれまで、国の住宅用設置補助制度が牽引役となって太陽光発電の導入量が拡大してきた。それに伴って設置単価が95年度には1`h当たり200万円を超えていたものが、05年度は約66万円にまで低減。補助金が設置価格に占める割合も当初の半額程度から、昨年度は1`h当たり2万円にまで下がった。
それにも関わらず導入が増えているのは、環境意識や余剰電力の売電など「設置者の動機が多様化」(新国禎倖・新エネルギー財団部長)して、必ずしも補助金に頼らなくなってきているからだ。
ただ、一層の普及拡大を図るためにはさらに価格を下げる必要があり、そのために求められるものとして東京農工大の黒川浩助教授は「生産規模を上げてコストダウンすることと、流通経費の削減」を挙げている。
黒川教授によれば、現在、太陽電池は1秒間に1枚も作れないため、これを「1秒間に何枚というオーダーに」しなければならないという。
一方、流通経費については一括購入すれば大幅に低減できるため、地域開発に組み込んでコミュニティ単位などで設置することを提案している。
住宅用の設置補助が終了した現在、国の補助の中で最も大きいのが、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が窓口となって実施している経済産業省の「太陽光発電新技術等フィールドテスト事業」だ。
これは産業分野や公共施設などにおける導入促進を図るため、10`h以上のシステムに対し事業経費の2分の1を補助するもので、昨年度は92億円、今年度は118億円の予算を計上。こうした施設や集合住宅などの導入拡大を図ることも今後の課題となっている。
■系統の負担減へ
国内における導入目標としては、国の10年度に累積で482万`hという数字のほかに、NEDOの「太陽光発電ロードマップ(PV2030)」で示されている30年に累積で1億`hという数字がある。
PV2030はその導入量を想定した上で、技術開発の道筋を提示しているものだが、いずれにせよ、そうした数字を達成していくためには、電力系統に過度な負担をかけないシステムの構築が不可欠だ。
それにはマイクログリッドのように、地域単位で需給を調整するシステムが必要であり、現在、国のプロジェクトや大学・民間企業の研究開発などとして、実証試験が行われている。
□主な記事□
・鼎談/世界とエネルギー情勢とわが国の原子燃料サイクル
出席者 山名元氏(京都大学原子炉実験所教授)/黒田裕幸氏(日本エネルギー経済研究所総合企画グループマネージャー)/畔蒜泰助氏(東京財団リサーチ・フェロー)
・大間原子力発電所・リサイクル燃料備蓄センター
・浜岡5号機タービン羽根脱落で高サイクル疲労確認
・原子力の保守管理検討会がスタート
□主な記事□
・中小水力開発の現状と課題
・インタビュー/導入の拡大に向けて 都留市総務部政策形成課課長 奈良泰史氏/新エネルギー財団常務理事 若林俊一郎氏
・中小水力発電の導入事例
・新しい耐震設計審査指針案を了承
中小水力の中でも、特に1千`h未満の小水力発電がちょっとしたブームになっているという。京都議定書目標達成計画が地方自治体にも地球温暖化防止に向けて率先した取り組みを求めていることや、環境問題への意識の高まりの中で、地方自治体や土地改良区、NPOなどが身近なエネルギーである小水力に着目したためだ。
水力発電は広く普及した技術であることから、これまで国のエネルギー政策の中で新エネに位置付けられていなかったが、温暖化防止に向けたさらなる取り組みを進める中で新エネと再生可能エネの概念整理が行われており、そこでは中小水力が新エネに、大規模水力は再生可能エネと位置付けられている。今後、開発が期待される中小水力に注目した。
水力発電は地球温暖化防止に貢献する再生可能エネルギーであるとともに、国産のエネルギーとして発電設備の約19%(一般水力9%、揚水10%)を占め、エネルギーセキュリティ面でも重要な役割を担っている。さらに中小規模の水力については、国の再生可能エネルギーと新エネルギーの概念整理の中で、新エネに組み込まれる見込みであり、最近は地域の電力需要に応じた分散型電源やRPS法の対象設備、京都議定書目標達成のための仕組みの一つであるクリーン開発メカニズム(CDM)のプロジェクトなど、様々な面で活用されるようになっている。
■資源量把握へ
中小水力についての明確な定義はないが、経済産業省による補助金などから判断すると、出力が3万`h以下のものを中小水力と言って差し支えなさそうだ。さらに1千`h程度以下のものを小水力、100`hより小型のものをマイクロ水力と呼ぶのが一般的だ。
水力発電には様々な種類があるが(下の囲み記事を参照)、現在使われている中小水力のほとんどが水の利用法では流れ込み式であり、したがって構造的には水路式が大半である。
水力の資源量については、これまで国が5回に渡って包蔵水力(技術的・経済的に利用可能な水力エネルギーの量)の調査を実施した。これにより、水力に関する未開発の地点が約2700カ所あり、その合計出力は約1200万`hに上ることが明らかになっている。
しかし、こうした地点は山奥であったり、小規模であったりということで、経済性の面から開発が進まないのが現状だ。
また、この調査はあくまでも水力発電一般の資源量の調査が目的であったため、中小水力発電が利用可能な既設ダムや水路の遊休落差については把握していなかった。
そのため、経済産業省の委託を受けた新エネルギー財団(NEF)が、中小水力を対象にした「未利用落差発電包蔵水力」調査を開始。99年度から03年度までの5年間で、既設ダムの河川維持用水、利水放流水(水道水、農業用水・工業用水)、砂防堰堤を主体とした調査を実施した。
04年度からは08年度までの計画で、既設水路を対象とした調査を行っている。
■ハイドロバレー
中小水力を巡って注目されるのが、地方自治体や土地改良区、NPOなどが小水力発電所を建設しようという動きで、それを後押ししているのが、経産省の「ハイドロバレー計画調査」や「中小水力発電開発費補助金」などだ。
ハイドロバレー計画とは、市町村などが実施する地域振興と地域の未利用エネルギーの開発を目的とした、自家消費型の小水力発電の開発計画のこと。
NEFでは、この計画を促進するため、経産省の委託を受け02年度から調査を開始し、同年度3地点、03年度10地点、04年度19地点、05年度25地点の調査を実施。今年度は20地点の調査と、02年度からの調査結果を基に建設へ向けた総合評価を実施している。
同計画の調査により実際に開発された事例としては、02年度に調査を行い、05年5月に運転を開始した熊本県山都町の「清和発電所」と、04年度に調査し、今年4月に運開した栃木県那須野ケ原土地改良区連合の「百村第一発電所」「百村第二発電所」がある。
中小水力発電開発費補助金は、3万`h以下の水力発電の開発に対し、10〜20%(この補助率では開発が困難な地点と、RPS法の認定を受ける地点には補助率を10%割増)の補助、新技術導入部分には50%の補助を行うもので、例えば、山梨県都留市の「家中川小水力市民発電所」はこの補助金を活用している。
また都市部の未利用エネルギーを有効活用するため、小水力やマイクロ水力を上水道に設置する取り組みも行われるようになっており、最近の例としては川崎市や横浜市の水道局などがある。
一方、RPS法で定められた義務を履行するため、電力自らが中小水力を開発するケースもある。中部電力は長野県南信濃村の北又度水力発電所(出力2万4千`h)用の注水路を利用した出力250`hの「易老沢(いろうざわ)水力発電所」を建設し、04年6月から運転を行っている。
さらに各電力会社が実施する海外のCDMプロジェクトで、中小水力を活用する例も増えている。
■普及への課題
今後、中小水力の開発を進めていくためには課題も多く、NEFではこれまでに様々な提言を行っている。
その1つが建設コストの低減で、農業用水や砂防ダムなどの既設設備に水力発電装置を設置したり、安価な発電設備を開発したりすることを求めている。
また河川や農業用水の水を使うには、河川法で許認可を受けなければならなず、その手続きにはかなりの労力を要するという。現在、一部簡素化が図られてきてはいるものの、小水力をさらに普及させるためには一層の簡素化が必要としている。
さらにRPS法の適用対象範囲の拡大も課題だ。RPS法は電気事業者に対し、新エネと再生可能エネからの一定量の電力を購入することを義務付けたもので、2010年度までに新エネと再生可能エネで、総発電電力量の1.35%に相当する122億`h時を賄うことを目指している。
現在、RPS法の対象となる水力は、既設・新設の別なく水路式で出力1千`h以下に限られている。これに対し、既設ダムの河川維持用水や利水放流水を利用した水力発電所を造ろうという動きが各地で見られることから、水路式に限らず、こうしたダム式、あるいはダム水路式の利水放流を利用した設備もRPS法の対象に含めることを提言している。
また、出力を1千`h以下に限定すると、開発地点が持つエネルギーのポテンシャルを十分に活用できない恐れがあるため、1万`h以下まで対象を拡大することも求めている。
これにより、現状の基準では、対象となる設備の年間可能発生電力量は新設で4千万`h時、既設で7億5千万`h時であるのに対し、拡大すれば新設5億9千万`h時、既設8億`h時になるという。
予算措置の拡充については、現在は対象外となっている1千`h未満の水力に対する支援措置と、老朽化した発電設備の更新工事に対する助成を挙げている。
一方、海外に目を向けると、CDMで中小水力を利用するプロジェクトが増えている。日本は水力発電の先進国であり、今後、水力はCDMの開発で先進国が先を争う方策の1つと見込まれることから、調査の加速と、開発促進のための支援を進めていくことも提言している。
夏の省エネ特集
□主な記事□
・省エネの実践事例/シムックス/日野自動車新田工場
・インタビュー/資源エネルギー庁省エネ対策課 渡辺琢也係長
・経済産業省/統一省エネラベルを作成
・原子力部会報告書まとまる
前線の停滞による豪雨によって、西日本を中心に大きな被害をもたらした梅雨もようやく開け、日本列島は夏本番を迎えている。
夏は冷房需要を中心としたエネルギー消費がピークを迎えるが、民生・運輸部門を中心に日本のエネルギー消費は増大傾向にあり、より一層の省エネルギーの推進が求められるようになっている。
そのため、4月に施行された「改正省エネ法」では運輸部門などの対策を抜本的に強化。5月に取りまとめられた「新・国家エネルギー戦略」でも、省エネが大きな役割を担うことを期待して、中長的な方針を示した「省エネルギーフロントランナー計画」を打ち出している。
省エネの現状や取り組み、対策などに注目した。
蓄熱月間特集
□主な記事□
・鼎談/ヒートポンプへの期待と展望
出席者 片倉百樹氏(東京電力執行役員)/射場本忠彦氏(東京電機大学教授)/吉野稔氏(ダイキン工業常務専任役員)
・高効率機器・システムの取り組み
・ヒートポンプの導入事例/晴海アイランド地区地域熱供給施設
・原子力部会が報告書案取りまとめ
温度の高いところと低いところを作り、必要な熱を取り出すヒートポンプは、使用するエネルギーの数倍のエネルギーが得られることから、省エネに貢献する機器として普及が期待されている。しかも、蓄熱システムと組み合わせることで、ヒートポンプの高効率運転が可能になり、一層省エネ性を高めるとともに、電力負荷平準化も同時に達成することが出来る。
ヒートポンプの中でも特に、CO2冷媒ヒートポンプ給湯器「エコキュート」については、京都議定書目標達成計画の中で、2010年までに約520万台を導入するという大きな目標が設定されており、ヒートポンプは地球温暖化防止への取り組みの中で、省エネ機器における主役の一つになったと言えるだろう。
□主な記事□
・バイオマス利用の現状と課題
・エネルギー業界の取り組み
・総合エネ調総合部会/新・国家エネルギー戦略案とりまとめ
・芝浦工業大学・豊洲キャンパスが開校
新エネルギーあるいは再生可能エネルギーの中で、いま最も注目されているのがバイオマスだと言っても過言ではないだろう。
バイオマスは02年12月に策定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」に基づき、国家プロジェクトとして利用促進が図られているが、京都議定書の目標達成に向け、2010年度の新エネルギー導入目標が見直される中で、バイオマス熱利用の目標値が当初の原油換算67万キロリットルから308万キロリットルに引き上げられた。
そのため、総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会の中間報告案では、バイオマス・エネルギー政策の再構築が掲げられている。バイオマスを利用促進していくためには何が必要なのか。現状や課題、今後の展望などを探った。
資源エネルギー庁によると、バイオマスとは「化石資源を除く動植物に由来する有機物であり、エネルギー源として利用可能なもの」とされている。バイオマス利用が地球温暖化防止になるのは「カーボンニュートラル」であるからだ。すなわち、バイオマスを燃焼させることで放出されるCO2は、生物が生長する過程で光合成により大気中から吸収したCO2であるため、放出されるCO2のバランスを考慮して利用すれば、CO2を増加させることにならないということだ。また、活用されないでいるバイオマスを新たに利用することで、エネルギー源の多様化が図られるというメリットもあるが、利用を進めるには課題も多い。
■木質バイオマス
バイオマスと一口に言っても様々な種類があり、利用状況や方法も様々だ。
森林の間伐材や製材工場から出る樹皮・おが屑、建築廃材などの木質バイオマスは、チップやペレットにして、石炭火力で石炭と混焼させたり、専焼の発電所やコージェネレーション、ボイラー、ストーブの燃料として使用する。
石炭火力での混焼については、四国電力の西条発電所ですでに実施されており、北陸電力・敦賀火力発電所と関西電力・舞鶴発電所でも計画されている。
木質バイオマス専焼火力としては、昨年11月に営業運転を開始したファーストエスコの「岩国ウッドパワー」(山口県岩国市、出力1万`h)がある。
コージェネやボイラー、ストーブについては様々なところで使われるようになっているが、長野県飯田市では環境省のモデル事業として、市内の小中学校や保育園、交流センターなど53の公共施設にペレットボイラーとストーブを70台設置している。
一方、山口市では木質バイオマスをガス化してガスエンジンコージェネの燃料として使用する実証試験が、地元企業とNEDOにより行われている。間伐材や竹材チップを蒸し焼きにしてガスを発生させ、ガスエンジンで使う。
ちなみに、製紙工場で出る廃液(黒液)も木質バイオマスと言えるが、製紙業界では早くからこれをコージェネ燃料として使用しており、日本製紙連合会によれば電力自給率は2003年で75%に達している。
■下水汚泥
下水処理場では、汚水をバクテリアで分解処理して上済みを取り除いた後に沈殿物が残る。これを下水汚泥と言い、その8割を占める有機分がエネルギー源となる。
汚泥をエネルギーとして利用するには、発酵させて消化ガスを作る方法や乾燥させてガス化する方法、炭化処理して固形燃料を作る方法などがある。
消化ガスを利用する発電設備にはガスエンジン・ガスタービン・燃料電池が使われる。いずれもコージェネとし、排熱はメタン発酵を促進させるため消化槽の加温に使用する。
国土交通省によると、今年3月の時点で、全国約1900カ所の処理場のうち約300カ所に消化槽があり、そのうち25カ所で処理場内の発電に使っている。
その一つが東京都下水道局の「森ケ崎水再生センター」で、東京電力と三菱商事の共同出資による「森ケ崎エナジーサービス」が、出力3200`hの専焼ガスエンジンを使って発電事業を行っている。
下水汚泥を乾燥させてガス化する方法については、東京ガスがNEDOの事業として埼玉県下水道公社の「中川水循環センター」で実証試験を行っている。下水汚泥を乾燥した後、ガス化炉でガス化し、都市ガスと混合してガスエンジンで発電する。
炭化処理して固形燃料を作る方法には東電が取り組んでいる。
■食品・農畜産
食品・農畜産バイオマスについては、食品加工工場の残渣や家庭の生ごみ、もみ殻、トウモロコシ、バガス(サトウキビの絞りかす)、家畜糞尿など様々な種類があり、メタン発酵によるガス化やバイオエタノールなどによりエネルギー利用が図られている。
キリンビール取手工場では、排水処理設備から発生する消化ガスを燃料として250`hの燃料電池を稼働し、電力と、排熱を回収して作った蒸気の全量をビール製造工程のエネルギーとして利用している。
家畜糞尿に関しては、京都府八木町で牛糞・豚糞・おからから発生したガスを利用して発電(220`h)を行うとともに、発電機の冷却水を暖房・給湯などに利用する事業を実施。処理後の糞尿などは堆肥化して農地に還元している。
食品・農畜産バイオマスで特に注目されているのが自動車用燃料の原料としての利用だ。バイオエタノールとバイオディーゼル燃料があり、最初からエネルギー利用のために栽培したり、生産過剰となったサトウキビやトウモロコシなどから作ったりする場合と、廃食用油やバガスなど食品残渣から作るケースの二つがある。
食品残渣からバイオディーゼル燃料を作る取り組みとしては「菜の花プロジェクト」が有名だ。これは休耕田などで菜の花を栽培して菜種油を生産し、食用油として利用した後、回収して燃料を作るものだ。
エネ庁によれば、同プロジェクトへの参加地域は今年2月時点で102カ所に広がっている。
後者については沖縄県の宮古島と伊江島で実証試験を実施中だ。製糖工場の副産物として出る糖蜜と、サトウキビの絞りかすの繊維分であるバガスを発酵させてエタノールを製造し、ガソリンと混合して島内で自動車用燃料として使用している。
■課題
このように、バイオマスのエネルギー利用に向けて様々な取り組みが行われているが、さらに活用していくとなると、様々な課題がある。例えば森林系の木質バイオマスは、日本にもかなりの量があるが、容積当たりのエネルギー密度が低い上に、広く薄く分布しているため、効率的な収集・輸送システムをいかに構築できるかが大きな課題となっている。
また下水汚泥は量と質が安定している上に、エネルギーの需要地である都市部で発生することや、収集が容易であることなどから、今後もエネルギー利用が拡大していく余地がある。
ただ、日本ガス協会によると、下水汚泥からバイオガスを発生させるための消化槽の維持・管理や、バイオガスコージェネを導入するためのコストがかかるため、むしろ消化槽を撤去する動きが見られるようになっているという。
現在、バイオマス・エネルギーのうち世界的にも利用が急速に進展しているのが自動車用燃料としての利用だ。日本でも05年4月に閣議決定された「京都議定書目標達成計画」の中で、10年度の輸送用燃料におけるバイオマス由来燃料の導入量として、原油換算で50万`gという導入目標が設定された。
石油連盟によると、そのうちの29万`gについては自治体などにおける取り組みで達成し、残りの21万`gを石油業界が分担することになっているという。
日本では安全性と排出ガスへの影響から「揮発油等の品質の確保等に関する法律」(品確法)で3%まで混合することが認められているが、バイオエタノールの利用は進んでいない。
理由はいろいろあるが、主なものとしてはエタノールは吸水性があるため、流通段階での水分混入を防止するための追加的な設備投資を行わなければならないことや、食糧自給率が低い日本では農産物から製造するバイオエタノールの供給量が限られ、製造コストも高いことが挙げられる。
東京電力
□主な記事□
・インタビュー/LMT社長 川口信氏
・関西電力など/ヒートポンプ式蒸気・温水製造装置を開発
・中部電力/電力系統制御用SMESの実証試験実施へ
・原子力発電所の耐震設計審査指針案をとりまとめ
東京電力は、燃料確保の安定性や経済性、環境への影響、運転特性などを総合的に考慮して、原子力・LNG・石油・石炭・水力をバランスよく組み合わせる電源構成、すなわち「ベストミックス」を実践することにより、電力の安定供給を図っている。
その中で、LNGは硫黄分をほとんど含まず、環境に優しい燃料であることから、火力発電の主軸となっており、04年度実績では電源別発電電力量の39%を占めた。
さらに最近では燃料として利用するだけでなく、LNGプロジェクトへの参加や自前のLNG船保有、LNG販売事業など、LNGの関連事業全体へ積極的に進出するようになっている。東電のLNGへの取り組みについて、改めて注目した。
LNGの取引には天然ガスの液化設備や気化器、タンク等の特殊な設備が必要なため、売主・買主ともに巨額の投資が伴うことから、生産されるLNGを相対の長期契約で取引するのが一般的だ。しかし、最近は生産能力の拡大や新規生産者の出現により、余ったLNGの一部が市場に放出されるようになり、スポット取引も行われるようになっている。こうした状況を背景に、東京電力はLNG取引を、より経済的かつ弾力的で柔軟性に富んだ契約にするため、従来の長期契約に加え、短期数量やFOB契約を取り入れたり、スポット調達を行ったりするようになっている。
●プロジェクト
2004年の世界のLNG輸入量は約1億3千万トン。日本はその43%に当たる約5700万トンを輸入している。次に多いのが欧州の23%で約3千万トン、以下、韓国(17%、約2200万トン)、米国(10%、約1300万トン)、台湾(5%、約700万トン)と続いている。
その中で、東京電力は年間約1600万dのLNGを長期契約ベースで調達しており、世界有数のLNGバイヤーとなっている。
東電は、1969年にアラスカからLNGの導入を開始して以来、ブルネイ・アブダビ・マレーシア・インドネシア・西豪州・カタールと七つのLNGプロジェクトから受け入れを行ってきた。
具体的には、アラスカのプロジェクトは東京ガスと共同で購入しているもので、70年に世界初のLNG火力として営業運転を始めた南横浜火力発電所1・2号機(いずれも出力35万キロワット)で使用している。当初は年間約72万トンを、その後は年間91万8千トンを受け入れており、現在の契約は09年3月までとなっている。
あるいは、ブルネイのプロジェクトは70年6月に東ガス・大阪ガスと共同で売買契約に調印したものだ。東電の契約量は、当初が年間238万トン、現在は93年4月から2013年3月までの20年間契約を結んでおり、年間受け入れ量は403万トンである。
今後は、川崎と富津のLNG火力で新規ユニットの運転開始が予定されているなか、開発にも参加しているダーウィンプロジェクトの受け入れが今年から始まるとともに、07年からはサハリン2プロジェクトとの取引も開始することになっている。
●LNG取引
LNGの取引は、売主側からの安定的な引取要請と、買主側が必要量を安定的に確保することを重視してきたことにより、これまでは長期的・硬直的な契約内容になっていることが多かった。
例えば、LNGの長期契約には一般的にテイク・オア・ペイという条項がある。これは、契約成立当初から各年度における引取り数量を決めてしまい、契約期間の途中で買主に何らかの都合が発生して引き取れない場合でもLNGの代金は支払わなくてはならないというものである。
しかし、2000年3月からの電力小売市場の部分自由化開始など、エネルギー業界を取り巻く環境が変化する中で、先行きの見通しが不透明なことから、東電ではLNG取引を従来に比べ経済的・弾力的で柔軟性に富んだ形態にするため、契約内容の変更に着手した。
その成果の一つが、03年4月に15年間の契約を更改したマレーシア・プロジェクトである。今回の契約では「短期数量」という新たな契約概念が導入され、4年ごとに70万トンを上限に、東電が各年度の引取数量を自由に決めることが可能になり、引取数量の弾力性を大幅に拡大することが出来るようになった。
さらに、これまでは全量がEx―Shipベースの取引だったものを、年間引取量480万トンの4分の1をFOB(買主がLNGタンカーを手配して自社向けに輸送する形態)に切り替え、東電が自社で保有するLNGタンカーで輸送することにより、弾力的な運用とコストダウンが可能になっている。
また、07年4月から22年間の契約を締結したサハリン2プロジェクトでも、基本数量150万トンとは別に、買主が自由に決められる買主オプション数量の権利を獲得した。
そのほか少量ではあるが、スポット調達も行っている。これまでにトリニダードトバゴとオマーンから受け入れており、LNG調達の弾力性の向上に寄与している。
□主な記事□
・インタビュー/さらなる普及に向けて
新エネルギー財団 計画本部 企画部長 窪田新一氏/足利工業大学 副学長 牛山泉氏
・着実に普及進む風力発電
・北陸電力・志賀原子力発電所2号機が運開
・新連載/「平成方丈記」濱田隆道・東京工業品取引所専務理事
世界の風力発電の設備容量は04年末で4800万キロワット弱に達した。日本でも国の建設補助制度や電力会社による電力の長期購入制度の整備、RPS法の導入、さらには自然公園法施行規則が改正され、国立・国定公園内で風力発電設備を設置する際の審査基準が定められるなど、風力発電を導入するための環境整備が進められ、05年3月末で約93万キロワットに達している。
その一方で、故障や事故、あるいは当初の予想と風況が異なったことなどによる稼働率の低下など、課題も顕在化してきている。そのような課題を克服して、10年度に300万キロワットという目標を達成するだけでなく、風力発電を真の意味で国内産業として育成していくためには何が必要なのか。風力発電の現状と課題を探った。
風力発電の導入目標として2010年度に300万キロワットという数値が示されている。まずはこの目標達成に向け官民を挙げて取り組むことが必要だが、さらに重要なのは日本に根付き始めた風力発電を国内産業として自立させ、国産エネルギーであり、しかも地球環境保全にも貢献する風力発電の普及を長期に渡って着実に進めていくことだ。そのために求められているのが日本の風況に合った風車の開発や系統連系対策、長期目標の設定などである。
●日本型風車
国の建設補助事業や電力会社による電力の長期買取制度などの導入支援策が講じられ、事業用の大型風力発電施設であるウインドファームが各地に建設されたことで、日本における風力発電の設備容量はここ数年で急増している。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、96年度には累積でわずか1万4千キロワットにすぎなかったものが、99年度から急速に普及が進み、同年度8万3千キロワット、01年度は31万3千キロワット、03年度は68万1千キロワット、04年度には92万7千キロワットに達した。
足利工業大学の牛山泉・副学長によれば、昨年度はついに100万キロワットを突破し、風車の本数は1100本程度になったと見込まれるという。
このように風力発電設備が全国各地に建設される一方で、国内の約9割を占める欧州製風車の故障・事故が目に付くようになった。これは、欧州製の風車が偏西風と平らな地形による安定した風を想定して設計しているのに対し、日本では台風による強風や雷、複雑な地形により風の向きや強さが絶えず変化する乱流が発生するためだ。
風力発電の故障・事故の実態を把握するために、04年度に設置されたNEDOの風力発電設備利用率向上調査委員会の調べでは、04年に全国で139件の故障・事故があり、そのうち21件が台風、13件が雷によるものだった。
そこで求められるのが、日本の自然条件に合った風車の開発である。NEDOは07年度までの3年間で「日本型風力発電ガイドライン」を策定する委員会を昨年9月に発足させ、日本に合った風車を開発するための指針づくりを始めた。
一方、それを先取りする形で日本に合った風車の開発を行っているのが富士重工業と三菱重工業である。富士重工は2千キロワット、三菱重工は2400キロワットの大型風車をそれぞれ開発し、実証試験を実施中だ。
●系統連系
風力発電の導入を進めていく上で課題となるのが電力会社の系統への連系である。風力発電のように風まかせで発電する電力が大量に系統に入ってくると、周波数変動が生じて工場の機械や家電製品などに悪影響を及ぼす恐れがあるため、各電力会社では風力発電による系統への連系可能量を設定して、受け入れを制限している。
この課題に対して、総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会では風力発電系統連系対策小委員会を設けて議論。昨年6月に中間報告をまとめ、方策として(1)解列(2)蓄電池の導入(3)会社間連系線の活用(4)導入制約量のない地域での立地D発電電力量予測システムの開発―を示した。
このうち解列とは、風力発電の出力変動に対応する調整力が足りない時間帯に風力発電を系統から切り離したり、出力の抑制を行ったりすることだ。電力会社は原子力などをベース電源とし、出力変動への調整を火力発電で行っているが、5月の連休のように工場が休みで冷暖房需要もない時には火力の運転が少なく、調整力が不足することになる。そうした時に解列を行うことを風力発電事業者と電力会社の間で協議しておけば、連系可能量が増やせるというわけだ。
蓄電池の導入は、ウインドファームあるいは系統側に、NAS電池やレドックスフロー電池などの電力貯蔵用設備を設置して、風力発電の出力変動を調整するというものだ。会社間連系線とは、文字通り電力会社間を結んでいる送電線のことで、これを通じて他の電力会社の調整力の活用などを図ることが考えられる。
導入制約量のない地域とは、風況条件の良い地点を見つけるのが難しかったり、良い地点は利用規制がかけられたりしているなどの理由で、風力発電の導入が進まず、連系可能量に達していない電力会社の管内のことだ。これに対しては規制が緩和された国立・国定公園や国有林内、あるいは港湾や沿岸部での設置などが検討されている。
発電電力量予測システムは、気象予測に基づいて24時間先ぐらいまでの発電量を予測するもの。デンマークなどではすでに実用化されているが、日本の場合は地形が複雑なので、欧州型のシステムをそのまま導入することができない。そこで、NEDOは「風力発電電力系統安定化等技術開発」プロジェクトを昨年11月に立ち上げ、07年度までに数種類の発電電力量予測システムの中から日本で使えるモデルを選び、精度や信頼性などを評価して、実用化にめどを付ける取り組みを始めている。
ちなみに、同プロジェクトでは蓄電池による出力変動を調整するシステムについての研究も行っている。
●長期目標
日本型風車の開発や系統連系以外の課題として、新エネルギー財団(NEF)の窪田新一・計画本部企画部長は(1)長期目標の設定(2)規制緩和(3)洋上風力の導入―を挙げている。
導入目標については、現在、2010年の数値が示されているだけだ。窪田氏は「風力発電が産業として自立するため、2030年程度までの長期導入目標を設定すること」を提案。昨年、NEDOが『風力発電ロードマップ』を作成し、風力発電導入に関する長期の可能性と、その実現に必要な対策を示しているが、「これを国として評価した上で、風力発電の将来展望に関する基本方針を明確にし、それに沿って具体的な施策を講じることが必要」と述べている。
規制に関しては、設置、建設、運用の実態を踏まえての緩和が必要であり、特に電気事業法に関する規則など巨大発電所を対象としたもので、いずれも実態に即していないものが多くあったとしている。
また洋上風力については、日本は世界有数の海岸線の長さを持つ海洋国家であることから「その特徴を生かしつつ風力発電産業を育成するという観点からも導入が求められる」と話している。
ただ、これらの課題が克服されたとしても、大規模風車を系統に連系するには限界がある。
このため、窪田氏は「エネルギー貯蔵技術について新エネルギー関連の技術開発として推進していくことが必要」と指摘。また牛山副学長は「将来的には洋上風力で水素を製造し、それを陸上に運んで燃料電池などで使ったり、あまり系統に影響を与えない小型風車を多数普及させたりすることになるのではないか」と見ている。
電気記念日特集
□主な記事□
・高齢者施設と電化厨房
・インタビュー/電化厨房のメリット−私はこう見る
にんじんの会 理事長 石川浩江氏/東京海上日動サミュエル 社長 碓田茂氏/オリンピア 社長 國武孝徳氏
・電化厨房の導入事例
・第8回原子力部会が開催
政府は2月10日に医療制度改革関連法案を閣議決定し、現在、38万床ある「療養病床」のうち23万床を2012年度までに高齢者施設に切り替える、という方針を打ち出した。これは療養病床の患者の半数程度が、医療をほとんど必要としない「社会的入院」と見られるからだ。そのため、高齢者施設の拡充が求められるようになっている。
高齢者施設と一口に言っても、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、あるいは富裕層を対象とした有料老人ホームや高齢者マンションなど様々なタイプがあるが、そうした違いに関わらず今、電化厨房の導入が進んでいるという。
なぜ電化厨房なのか。3月25日の電気記念日にちなみ、高齢者施設における電化厨房普及の理由を探った。
入居者や利用者が高齢者施設の食事に求めるのは質の高さと安全性、個人への配慮であろう。一方、経営者にとっては入居・利用者の満足を得ることはもちろん、ランニングコストや人件費の抑制も重要であり、調理スタッフが働き易い環境を提供し、サービスに配慮させることも大切だ。こうした様々なニーズに応えるのが電化厨房である。
電化厨房とは、加熱調理機器に燃焼式ではなく、電気式を採用した厨房のことだ。電化厨房の特長は「3C+P」と言われており、火を使わないため、厨房環境が清潔(Clean)で涼しく(Cool)、温度・調理時間の管理(Control)も容易であることから生産性(Productivity)が向上するというものだ。
特に火を使わないことは入居・利用者の安全が最優先の高齢者施設において、経営者やスタッフの心配を一つ減らせるうえ、調理機器の立体配置も可能なため、厨房をコンパクトにできるという利点もある。
さらに清掃が容易でオープンキッチン化もできるので、あえて見せる厨房を演出している施設もある。
これらについては、今後、一つの施設でデイサービス、ショートステイ、グループホームなどの複合化が進み、小規模・多機能化する施設の設計に重要なポイントになるといえるだろう。
さらに最近は、大量・多品種調理に対応しつつ、高品質,安全性を保ちながら効率化を図るため「真空調理」や「クックチル」といった新調理システムを採り入れる施設が増えているが、電化厨房はこうした調理法にも適している。
というのは、真空調理は食材を調味料と一緒に真空パックして袋ごと加熱後,冷却して保存、クックチルは加熱調理した食品を急速冷却してチルド保存する。どちらも再加熱して提供するが、これらの調理法では調理から提供までの一連の作業で、温度・時間の管理が重要なポイントだからだ。高齢者施設では、好み・味付け・硬さ・量・喫食時間が人によって異なるが、新調理システムを上手に採り入れることで、限られたスタッフでも無理なく対応できるという。
これはまた作業の平準化、すなわちスタッフにとって労力の軽減を意味する一方、経営者にとっては必要以上のスタッフを抱えなくても済むため、人件費の削減にもなるわけだ。
あるいは、高齢者施設をチェーン展開している事業者の中には、セントラルキッチン(給食センター)を設けて一括調理し、各施設の厨房をサテライトキッチン化。新調理システムによる食材を配食し、サテライトでは再加熱して盛り付けるだけ、というところもある。こうしたケースでも、電化厨房の威力が発揮されることになる。
このように、高齢者施設に適した電化厨房であるが、当然課題もある。その一つがイニシャルコスト。従来の燃焼式に比べて割高なことだ。
ただ、この点については火を使わないため換気量や空調負荷が小さくなり、これらの設備と消防設備を縮小できること。さらに、空調・換気コストの削減電気料金割引により、ランニングコストも抑えられることから、厨房をトータルで見れば問題にならないという見方もある。
もう一つの課題としては調理スタッフが昔の電気調理器のイメージを持っていたり、まだまだ最近の電化厨房に慣れていないこと。IH調理器など特長を活かした使い方をせず、逆に不満を持たれてしまうことだ。ほかにも先述の新調理システムの活用に不可欠なスチームコンベクションオーブンである。これは上手に活用すれば煮る・焼く・蒸すなどを1台で大量・同時にこなす万能調理器となりうるものだ。
さらに、食中毒を防ぐための芯温のチェックを自動で出来るなど、優れた機能を備えているにも関わらず、現状では活用しきれていないケースが目立つという。
そこで、電力会社や厨房メーカーでは、新調理システムを含めた電化厨房の活用法を知ってもらうセミナーなどを開催しており、東京電力法人営業部の山田泰司課長は「こうした取り組みやイベント出展、インターネットの“電化厨房ドットコム”を通じ、高齢者施設の食事サービスとアメテニティの向上をサポートしていきたい」と話している。
省エネルギー月間特集
□主な記事□
・対談/暮らしの中の省エネ
出席者 河野修一氏(省エネルギーセンター専務理事)/秋葉悦子氏(日本消費者アドバイザー・コンサルタント協会東日本支部長)
・省エネルギーセンター/省エネへの取り組みを表彰
・オフィス・工場の省エネ活動/大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会、出光興産・千葉製油所
・第7回原子力部会が開催
気象庁によると、非常に強い寒気が日本列島に断続的に流れ込んだため全国的に気温の低い日が続き、12月は1985年以来20年ぶりの低温となった。特に東・西日本では、月平均気温の平年偏差は東日本でマイナス2・7度C、西日本で同2・8度Cとなり、1946年に地域平均の統計を開始して以来、最も低い記録となった。
このため、今冬は電力・ガス・灯油の消費が急増している。エネルギー消費が伸びることは、取りも直さずCO2排出量が増えることを意味しており、京都議定書の目標達成に向けて加速的に対策を進めなければならないわが国にとって、現在は省エネへの意識が一層求められる状況にあると言える。省エネ月間である2月に改めて省エネの現状に注目した。
新春対談
□主な記事□
・新春対談/エネルギー安定確保と地球環境保全に向けて
出席者 殿塚猷一氏(日本原子力研究開発機構理事長)/中村政雄氏(科学ジャーナリスト)
・東北電力/東通原子力発電所1号機が運開
・東京電力/尾瀬の自然を守って40年
・サンインタビュー/濱田隆道氏(東京工業品取引所専務理事)
原子力に関する基礎的研究から応用研究までを担ってきた日本原子力研究所と、核燃料サイクルを確立するための研究開発を行ってきた核燃料サイクル開発機構が昨年10月1日に統合し、日本原子力研究開発機構が発足した。折しも、原子力政策大綱が策定され、原子力の必要性が改めて示される中で同機構の役割はますます重要になっている。そこで同機構理事長の殿塚猷一氏と科学ジャーナリストの中村政雄氏に、原子力や同機構の役割と期待などを話し合ってもらうことにした。
□主な記事□
・鼎談/家庭用コージェネの展望
出席者 平田賢氏(芝浦工業大学長)/今井晃氏(本田技術研究所上席研究員)/西田亮一氏(日本ガス協会技術開発部副部長)
・家庭用コージェネの導入事例
・新たなシステムへの取り組み
・美浜発電所へのテロ想定し国民保護法初の実働訓練
コージェネレーションは、熱と電気を同時に供給する熱電併給システムである。ガスエンジンやガスタービン、燃料電池などを使って発電しながら、同時に発生する排熱を利用して給湯・暖房・冷房などに使うことで、エネルギーの有効利用を図るものだ。
そのため、京都議定書目標達成計画でも、省CO2型の都市デザインや、エネルギー供給部門の省CO2化の対策の一つとして、コージェネの導入促進を求めている。
コージェネはこれまで工場やホテル、病院、店舗など産業用・民生用の様々な分野で使われてきたが、最近は1キロワットのガスエンジンコージェネや燃料電池コージェネが登場し、家庭でも使われるようになっている。家庭用コージェネに注目した。
家庭用コージェネシステムのうち、燃料電池を利用したシステムについては限定的な市場投入が始まり、ガスエンジンを使用した「エコウィル」はすでに全国で2万台が普及している。固体高分子型燃料電池(PEFC)を用いた「ライフエル」とエコウィルの導入事例を紹介する。
積水ハウスが11月12日から販売を開始した分譲地「コモンステージ吉祥寺・桜の杜」(東京・武蔵野市)では、建売分譲住宅7棟に東京ガスの「ライフエル」が設置されている。
ライフエルは、東ガスが荏原バラード・松下電器産業と共同開発した固体高分子型燃料電池(PEFC)による家庭用燃料電池コージェネレーションシステムで、世界に先駆けて2月から限定的に市場投入を開始した。
システムは、定格出力1キロワットのPEFCと200gの貯湯槽で構成。都市ガスから水素を取り出して、空気中の酸素と化学反応させることで発電し、同時に発生する熱を利用して給湯も行う。これにより、従来システムに比べCO2の排出量を約40%削減、一次エネルギー消費量も約26%削減可能となる。
ライフエルを搭載した7棟には、コージェネによる電気と熱を活用する温水床暖房や浴室暖房乾燥機、温水ラジエーターなどを備えているため、快適な暮らしを送りながら地球環境へ貢献できるわけだ。
居住者はライフエルの利用に当たり、3年間のデータ提供やアンケートへの協力、燃料電池を10年間利用することなどを定めた「FCパートナーシップ契約」を東ガスと締結する。10年間のリース料100万円(メンテナンス費を含む)は建物販売価格に含まれている。
今回の分譲地はJR吉祥寺駅から徒歩11分と利便性が良いにも関わらず、武蔵野市の閑静な住宅街に位置している。第1期分譲は16区画を予定しており、そのうち9区画を積水ハウスの建築条件付き分譲地として、7区画をライフエル搭載の建売住宅分譲地として販売するものだ。
分譲地内にある600平方メートルを超える「プライベートガーデン」「四季の小路」には、20種類60本以上の桜を始めとした150種以上の植栽や、武蔵野の雑木林を再現したビオトープを設け、心地良い空間を創出している。また街全体と各戸を二重に守るセキュリティシステム、防災倉庫・雨水貯留槽など街全体としての防災設備を設置していることなども特長だ。
4月に「サステナブル宣言」を行うなど、持続可能な社会の実現を目指している積水ハウスは、エネルギー効率の高い家庭用燃料電池コージェネシステムにも早くから注目。東ガスと検討を重ね、同月に分譲を開始した「京王堀之内」(東京・八王子市)分譲地内の建売住宅に、一般戸建て住宅としては世界で初めて都市ガス仕様の定置用燃料電池(ライフエル)を導入しており、今回の採用はその一環だ。
兵庫県三田市のS氏邸では、1キロワット家庭用ガスエンジンコージェネレーションシステム「エコウィル」を使用している。
S氏が家を購入するに当たってポイントになったのが、エコウィルが標準装備されていたことだ。太陽光発電が装備されている家も考えたが、費用対効果を考慮してエコウィルを選択した。
実際に使ってみての感想は「ガス代が思ったほどかからなかったこと」。例えば、エコウィルで作った給湯を利用する床暖房だけで十分な暖かさが確保できるため、他の暖房器具が必要なく、その分暖房費が節約できるわけだ。S氏宅には小さな子供がいるので、床暖房だけで暖房が賄えることは安全面からも助かるとのこと。
さらにエコウィルのリモコンには省エネ指数の表示が出ることから「省エネへの関心も高まり、工夫をするようになった」とS氏は話している。
エコウィルは大阪ガス・東邦ガス・西部ガス・ノー率・長府製作所が共同で開発したガスエンジンの排熱利用システムと、本田技研工業が開発した1キロワットガスエンジンを組み合わせたもので、03年3月に発売を開始した。
発電した電力を家庭内で使用するとともに、発電時に発生した排熱を給湯やガス温水式床暖房、浴室暖房乾燥などの暖房に利用できるため、発電効率が約20%、排熱利用効率が約65%で、総合エネルギー利用効率は約85%にもなる。
また住宅内の電力と熱のエネルギー負荷パターンに合わせて運転するので、電力と熱を有効に利用でき、1次エネルギー換算でCO2の排出量を年間で約20%削減することができる。さらに各家庭で最適な省エネ運転を実現する学習機能が付いていることも特長だ。
今年4月にリニューアルを行い、学習機能や経済性、設置性を一層向上させている。
□主な記事□
・クリーンエネルギー自動車の現状と課題
・インタビュー/普及への取り組みと展望
廣島伸一氏(日本ガス協会天然ガス自動車プロジェクト部副部長)/井口俊勝氏(日本自動車研究所電動車両普及センター主任研究員)
・電力中央研究所/エネルギー未来技術フォーラム開催
・CSRへの取り組み/関西電力・中国電力
省エネルギーセンターによると、この30年間のエネルギー消費は産業部門で横ばいなのに対し、民生部門と運輸部門では2倍以上増え、京都議定書の目標達成にはこの2部門での省エネが不可欠になっている。
このうち運輸部門では自動車のエネルギー消費が約9割を占めていることから、ハイブリッド自動車や天然ガス自動車、電気自動車などクリーンエネルギー自動車の普及促進が求められており、「京都議定書目標達成計画」の中でも、2010年度に累積導入量を合計233万台とする目標が立てられている。
しかし、04年度末で約25万台程度が普及しているに過ぎず、この数値とはまだかなりの開きがあるのが現状だ。クリーンエネルギー自動車普及への課題を探った。
クリーンエネルギー自動車とは、CO2やNOx、SOxなど地球温暖化や大気汚染の原因となる有害物質をまったく排出しないか、排出量が少ない環境性に優れた車のことだ。新エネ法上は電気自動車、メタノール自動車、天然ガス自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車の5種類だが、京都議定書目標達成計画では、これにディーゼル代替LPガス自動車も含めている。これは、新エネ法が石油代替を目的としているのに対し、目標達成計画はCO2排出削減を目標としているからだ。同計画では、04年度末で25万5千台程度にとどまっているクリーンエネルギー車の導入を、10年度までに約233万台とする目標を立てており、これにより約300万トンのCO2を削減する考えだ。
●現状と課題
資源エネルギー庁によると、233万台の内訳は、ハイブリッド車が約184万台、電気自動車が約800台、天然ガス車が約23万台、ディーゼル代替LPG車が約26万台で、ハイブリッド車が目標数値の大半を占めている。メタノール車が入っていないのは、03年末で約140台とほとんど普及していないからで、燃料電池車はまだ市販車ではないからだ。
ハイブリッド車以外のクリーンエネルギー自動車の普及が大きく見込めないのは、まずベースとなるガソリン車との価格差が、一部にはほとんどなくなっている車種はあるものの、依然として大きいからだ。
これに対し、国や自治体では導入支援策を講じており、例えば経済産業省ではクリーンエネルギー車とベースとなるガソリン車との差額の2分の1以下を補助する「クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金」(05年度予算額94億円)や、自動車取得税の軽減、低利融資などを行っている。
次に燃料供給設備、いわゆるエコ・ステーションの設置が進んでいないことも普及を妨げる要因となっている。特に地方都市での設置が進んでいないのが課題で、04年度末でエコ・ステーションは全国に328カ所であるが、その3分の2は東京・名古屋・大阪を中心とする大都市圏に設けられている。
エコ・ステーションについても国の導入支援があり、例えば天然ガススタンドを設置するのに1基1億円程度かかるのに対し、上限9千万円までの補助がある。それでも「採算が取れるまで年数がかかることや、今のところ地方では大都市圏ほどのニーズがない」(清野久美子・資源エネルギー庁新エネルギー対策課課長補佐)ことなどから、普及が進まないのが現状だ。
ただ、供給設備については車が増えないから整備が進まないのか、供給設備が充実していないから車が普及しないのかという、鶏と卵の議論に似た問題があり、いずれにせよ首都圏で運送会社が天然ガス車を大量導入したように、ある程度の台数が確保できれば、供給設備の設置も進むものと思われる。
また1回の燃料供給による走行距離も伸びる傾向にはあるものの、ガソリン車に比べるとまだ十分とは言えないことも普及への課題となっている。
●ハイブリッド車
こうした中で、急速に普及が進んでいるのがハイブリッド車である。累積導入量は02年度に約9万1千台だったものが、03年度に約13万3千台、04年度には約19万9千台となっている。
その要因としては、燃料がガソリンで新たなインフラが必要ないこと、環境意識の高まりや原油高騰を背景に燃費の良さが評価されていることが挙げられる。
ハイブリッド車とは複数の動力源を組み合わせ、状況に応じて同時または個々に作動させて走る車のこと。使用する動力源や組み合わせ方でいろいろなハイブリッド車が考えられるが、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンとモーターの組み合わせが一般的である。
ハイブリッドの特徴は、減速・制動時に熱として捨てていたエネルギーを電気エネルギーとして回収しモーターなどで使うことや、加速時にエンジンの駆動力をモーターが補助すること、エンジン効率の低い条件ではモーターだけで走るなど効率の良い走行により燃費を向上させていること―などだ。
代表的なハイブリッド車はトヨタ自動車の「プリウス」である。シリーズ・パラレル方式のハイブリッドシステム「THS」を採用し、97年12月に従来のガソリン車に比べ2倍の燃費を実現した世界初の量産ハイブリッド車として登場した。03年9月にはシステム性能を向上させた「THS―U」を採用した新型プリウスを発売。販売台数は海外も含め累計12万台を超えている。
これまでは車種が限られていたが、トヨタが多様な車種のハイブリッド車を発売したことや、他社もハイブリッド車を発売していること、ベース車との差額も縮小していることなどから、今後も着実に伸びていくことが見込まれている。
●電気自動車
広い意味ではモーターを使って走るハイブリッド車と燃料電池車も電気自動車に含んでいるが、狭い意味では電気自動車は充電してモーターで走る車のことだ。
日本自動車研究所電動車両普及センターによると、その開発の歴史は古く、20世紀の始めには米国での自動車保有台数約4千台のうちの4割程度が電気自動車であったということだが、ガソリン車の技術進歩に伴い電気自動車は使われなくなったという。
大気汚染や地球温暖化問題への対策として見直され、90年代半ば以降、メーカー各社が高性能な車を実用化したが、普及が進まず導入台数は02年度1180台、04年度900台とむしろ減る傾向にある。
ただし、道路交通法では自動車になるが、道路運送車両法では原付自転車に分類される超小型自動車の普及は進んでいる。
狭義の電気自動車の導入が減る中で、新たな動きも見られている。それは、価格・充電時間・走行距離という課題を解決する車の開発が行われていることだ。
富士重工業と東京電力が共同開発している『Re1』や、三菱自動車が開発中の『ランサーエボリューションMIEV』がそれで、こうした車の実用化されれば、普及が大幅に進む可能性もある。
●天然ガス車
天然ガス車は、高圧に圧縮した天然ガスを車に搭載した容器に充填し、圧力調整器で減圧してエンジンに供給するもので、燃料供給系統以外はガソリン車やディーゼル車とほとんど同じ構造をしている。
日本ガス協会によれば、日本ではトラックやバスを中心に9月末現在、2万5558台が導入されているだけだが、世界では約410万台の天然ガス車が走っている。特に天然ガスの産出国であるアルゼンチンとブラジルでは100万台以上が導入されている。
こうした国で使われているものとして、天然ガスとガソリンや軽油を組み合わせたバイフュエル車がある。普段は天然ガスを使って走り、走行中に天然ガスがなくなったらガソリンなどを燃料として充填スタンドまで走るわけだ。
日本で天然ガス車の普及が進まない理由の一つにスタンドの整備が進んでいないことがあるが、こうした車を使うことも導入促進のためには必要かもしれない。
また天然ガス車には様々な車種があるが、現在は10d車が最大クラスであることから、より大きな25dクラスの開発が行われている。さらに気体燃料ではどうしても走行距離が短くなるため、LNGをそのまま搭載する車の開発なども行われており、こうした車の実用化も期待されている。
●ディーゼル代替・LPガス車
LPガスの価格はガソリンの半分程度であるため、1963年からタクシーで使われるようになり、LPガス車自体は現在、タクシーを中心に全国で約29万台が使われている。
LPガス車は経済的であるだけでなく、排気ガスに黒煙や粒子状物質が含まれず、NOxの排出も少なく、CO2排出量がガソリン車に比べ約10%少ないことも特徴だ。
車種も約100種類あり、価格もディーゼル車に比べ10%程度高いだけということから普及が進んでおり、エネルギー基本計画でもLPガス車の導入促進がうたわれている。
ただし、京都議定書目標達成計画における対策として掲げられているのは、一般のLPガス車ではなく、ディーゼル代替LPガス車だけだ。なぜそうなのか、はっきりしないが、94年6月の総合エネルギー調査会石油代替エネルギー部会の中間報告でクリーンエネルギー自動車が定義されており、その中でLPガス車については「ディーゼル代替のもの」と記されていることから、これが根拠になっているのではないかというのが一つの見方だ。
ディーゼル代替LPガス車はごみ収集車や流通・運輸業の配送車などで軽油の替わりにLPガスを使うものだ。すでに供給設備も全国にあることから、目標の達成は難しくなさそうだ。
□主な記事□
・鼎談/原子力政策大綱を巡って
出席者 近藤駿介氏(原子力委員会委員長)/森福都氏(作家)/尾崎正直氏(科学技術ジャーナリスト)
・営業運転開始に向け最終段階迎えた北陸電力・志賀2号機
・インタビュー/志賀原子力発電所建設所長 紫藤正一氏
・Jパワー●風力発電所を積極展開
□主な記事□
・インタビュー/太陽光発電のさらなる普及へ
黒川浩助氏(東京農工大学大学院教授)/瀧川利美氏(資源エネルギー庁新エネルギー対策課課長補佐)/林一博氏(太陽光発電協会事務局長)
・導入事例/京セラ滋賀八日市工場・平出椎茸生産組合
・東京電力●サステナビリティレポート2005
・高経年化対策―報告書まとまる
日本では消費者の環境意識の高まりや国の導入補助制度、電力会社による買取制度などが設けられたことで太陽光発電の普及が着実に進み、2004年末の累積導入量は約113万`hに達し、世界最大の太陽光発電導入国となっている。
しかし同年末の累積導入量が約79万`hで2位だったドイツでは、ここ1〜2年、日本を遥かに上回るペースで普及が進み、日本から世界一の座を奪う可能性が出てきた。
発電の過程でCO2を排出しない太陽光発電の普及は、地球温暖化防止のために不可欠であり、導入量世界一であり続けることは新エネルギー政策と産業政策の両面から意味があると言える。そこで太陽光発電の普及をさらに進める上での課題や方策、今後の展望などを探った。
日本における太陽光発電の累積導入量は、04年度に113万キロワットとなり100万キロワットの大台を超えた。特に、アメリカを抜いて累積導入量で世界一となった99年度以降は急速に普及が進み、同年度から04年度の5年間に約5倍も増えた。また、世界的にも、ドイツを中心としたヨーロッパやアメリカ、アジアでも速いペースで導入が拡大しており、04年の世界の導入量は1千万キロワットを超えている。
●導入補助
世界一の太陽光発電導入国である日本の地位を脅かしているのはドイツ。累積導入量では依然として日本がトップだが、年間の導入量では、04年に日本が約27万キロワットだったのに対し、ドイツは約36万キロワットで、95年にアメリカを抜いてから保ってきた世界一の座を初めてドイツに奪われた。
ドイツは再生可能エネルギー法により、電力会社に対し太陽光を始めとする新エネルギーからの電力を購入することを義務付けているが、04年8月に太陽光からの電力の買取価格を大幅に引き上げたことから、売電を目的とする大規模な施設の建設が急速に進んだ。
一方、日本でもここまで太陽光発電が普及したのは、国による住宅用への設置補助制度や、電力会社による余剰電力購入メニュー、すなわち太陽光発電で作った電力のうち、自家消費出来ない分を電力会社が販売価格と同額で購入する制度があったためだ。
しかし、住宅用への設置補助制度が今年度限りで終了することになっており、世界一の座を守るためにも、また2010年度に482万キロワットという導入目標を達成するためにも新たな補助事業の設置が必要である。そこで、資源エネルギー庁と環境省は新たな導入支援策を講じることになった。
資源エネルギー庁が概算要求で示した支援策のうち、色素増感や化合物系など新しい素材や構造などを採用した太陽光発電技術の開発を推進するための予算として約20億円、2010年に家庭用電灯料金並みの発電コストを目指すための技術開発へ8億円を計上。
また、電力供給用の大規模太陽光発電の導入により電力系統へ悪影響を及ぼすことを避けるための蓄電技術や制御技術、高調波対策技術を開発して有効性を実証するための研究に10億円、オフィスビルや公共施設、集合住宅などへの導入普及を強化するためのフィールドテスト事業に118億円を盛り込んでいる。
さらに、住宅用の支援として財政投融資制度を活用して、太陽光発電システムを割賦販売するクレジット会社に低利融資をする制度を考えている。
他方、環境省は「ソーラー大作戦」との総称により多様な施策を展開する方針だ。その一つが「ソーラー・マイレージクラブ事業」。同省が温暖化対策を推進するため、全国で設置を進めている地域協議会を通じ、地域ぐるみの太陽光発電の導入を促進するもので、ある程度の数の住宅が集団で太陽光発電設備を導入して、大幅なCO2排出削減を達成した場合、削減量に応じて3年間の助成を行う。
また「街区まるごとCO2 20%削減事業」は、導入して20%以上のCO2削減効果のある太陽光発電などの設備を街区全体に整備した開発業者に補助金を交付する考えだ。概算要求額はそれぞれ3千万円と5億円である。
●メーカー
国内外で需要が急増しているのに対し、世界の太陽光発電生産量の約半分を占めている日本のメーカーは増産体制を構築している。
04年の生産量が32万4千キロワットで5年連続世界一となったシャープは、今年1月に奈良県の葛城工場(旧新庄工場。町名変更により名称変更)に太陽電池セルのラインを増強。年間生産能力を31万5千キロワットから40万キロワットに拡大するとともに、素材であるシリコンの不足に備え、セルの厚さを200ミクロンから180ミクロンへと薄型化し、材料の有効活用とコストダウンを図っている。
また、同工場では新たに薄膜太陽電池モジュールを年間1万5千キロワット生産可能な量産体制を構築し、今月から稼働を開始。これにより同社の国内生産能力は50万キロワットとなった(太陽光発電協会調べ。以下同)。
さらにシャープはアメリカ・テネシー州メンフィス市とイギリスのレクサムのモジュール工場でも04年に生産能力をいずれも4万キロワットまで拡大している。
生産量2位の京セラは世界市場をにらみ、太陽電池モジュール生産の「世界4極体制」を確立した。
同社は、中国天津市で03年11月にモジュール生産組立工場を稼働させたのに続き、メキシコ・ティワナ市とチェコ・カダン市に、それぞれ米国市場とドイツを中心とする欧州市場向けの工場を建設。前者は昨年10月から、後者については今年4月から稼働を開始している。
これにより三重県の伊勢工場と合わせ、日本・欧州・米国・中国という四つの主要市場で、それぞれの需要に対し迅速に対応できる供給体制を確立することになった。
同社の国内生産能力は05年度で24万キロワット。国外では06年度までに12万6千`hになる予定だ。
三菱電機は中津川製作所の飯田工場(長野県飯田市)と京都工場(京都府長岡京市)に太陽電池セル・モジュールラインを増設し、今年4月に従来の9万キロワットから13万5千キロワットに増強した。さらに06年度以降、年間生産能力23万キロワットの生産体制の確立を目指している。
三洋電機は、海外への販売比率を、05年度の全生産量の50%とすることを目指しており、03年に北米市場へ太陽電池モジュールを供給するためのメキシコ・モンテレー工場の稼働を開始。今年6月からは欧州市場向けにハンガリー工場(ハンガリー・ドログ市)で生産を始め、日米欧の3大市場へのモジュール供給体制を整備した。
同社の国内生産能力は06年度に25万キロワット、10年度には100万キロワットを目指している。また国外については、06年度に11万キロワットとする計画だ。
一方、昭和シェル石油は結晶シリコン系とは異なる薄膜系のCIS系太陽電池を生産する工場を宮崎県田野町に建設する予定で、今年末から建設を開始し、07年初頭から年間2万キロワットの生産を行う計画である。
●課題
太陽光発電をさらに普及させていくためには、太陽電池とインバーターを始めとする周辺機器のコストダウンが不可欠だ。
太陽電池については、製造速度と歩留まりを上げるための製造工程に関する技術開発と、新たな太陽電池の開発が求められている。
現在、主流を占めている太陽電池は結晶系だが、シリコンが高い上に供給が不足気味であることから、基盤となるシリコンを薄くした「薄型」と呼ばれるものが作られるようになっているものの、一層のコストダウンを図るにはシリコン系以外の太陽電池も必要だ。
効率向上などの課題はあるが、すでに実用化されているものとして「薄膜系」「化合物系」があり、将来的には「色素増感」のような新しいタイプの太陽電池の実用化が期待されている。
夏の省エネキャンペーン
□主な記事□
・インタビュー/省エネルギーセンター専務理事 河野修一氏
・夏の省エネルギーキャンペーン
・負荷平準化に寄与するガス冷房
・原子力政策大綱の原案まとまる
地球温暖化防止のため、日本が二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス排出量の6%削減を公約した京都議定書が2月に発効した。
温室効果ガスのうち、約9割はエネルギー起源のCO2で、省エネルギーはその対策としてますます重要になっている。
また、8月3日には「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」改正案が成立し、省エネ対策が抜本的に強化されることになった。
一方で、ニューヨーク商業取引所の原油先物相場で原油価格の最高値が次々に更新され、国内のガソリン価格にも影響が出ているほか、真夏日が続き、家庭・オフィスでの冷房需要の増加が予想される。
省エネルギーセンターの活動を中心に、夏の省エネを紹介する。
経済産業省・資源エネルギー庁は6月に省エネルギー・省資源対策推進会議省庁連絡会議を開催し、「夏季の省エネルギー対策について」を決定した。政府は各官庁などで「冷房中の室温28度C」や「夏の軽装」など、省エネ対策を率先して実施しており、合わせて国民に協力を呼びかけている。
●政府の取り組み
夏季の省エネルギー対策は、大きく「政府としての取り組み」と「産業界および家庭など国民に対する協力要請」にわかれている。
「政府としての取り組み」は、京都議定書目標達成計画やグリーン購入法などに基づき、省エネ対策を実践するほか、「省エネは新しい積極的なライフスタイル」というイメージを構築し、その浸透のための広報活動やエネルギー教育を進めている。
具体的な対策としては、「冷房中の室温28度Cと夏の軽装」「OA機器などの消費電力の削減」「昼休みの一斉消灯など消灯の徹底」などで、行政機関におけるエネルギー使用量を前年度夏季比1%以上の削減を目標している。
「省エネは新しい積極的なライフスタイルというイメージの構築」は、従来の「我慢・節制という消極的なイメージ」を払拭するためで、食生活、ファッション、住環境などで情報を提供し、省エネを自発的に受け入れる意識を醸成する。特に若者や子どもが省エネ習慣を身に付けるように、エネルギー広報・教育を充実させる。
また、サマータイムについても、普及啓発を図る。
●国民の協力
国民に対する協力要請は、「工事・事業場」「業務・家庭」「運輸」「その他」の4分野で行われ、工場・事業場では「エネルギー管理の徹底」「自主的な省エネ活動の推進」「エネルギー診断の実施」「省エネ研修の機会提供」の4点を求めている。
「業務・家庭関係」は「家電などエネルギー消費機器」と「住宅、ビルなど」に区分し、さらにエネ消費機器については「製造・輸入事業者」など関わり方ごとにわけ、それぞれで具体的な省エネ対策を要請。住宅・ビルでは、エネルギー効率の良い設備の設置や冷房などエネルギー管理の徹底などをあげた。
運輸関係では「製造・輸入段階」「購入段階」「利用段階」と各段階で、アイドリングストップなど省エネ対策をあげ、最後にその他として、地域特性を踏まえた取り組みや廃棄物の発生抑制(リデュース)・再使用(リユース)・再利用(リサイクル)などを求めた。
このほか、各省庁や省エネルギーセンターにより、省エネ広報活動が行われており、国民に対して夏の省エネを呼びかけている。
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