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「事業仕分け」で国の2010年度概算要求から約7千億円を削減した。このほかに、いわゆる埋蔵金の 返納要求額は1兆円規模になった。目標の3兆円には届かなかったが、かなりの成果である▼これから財務省の予算査定が本格化する。意見が割れているものについては、閣僚折衝などに持ち越されるが、行政刷新会議はこの結果を「最大限尊重する」としており、簡単には覆せない▼もちろん、いろいろな意見があった。とくに科学技術予算の削減に関しては、国際競争力の低下につながりかねないとの反発があった。例えば次世代スーパーコンピューターの開発に関しては、政府の総合科学技術会議の有識者議員が、手厚い配分を求めている▼仕分け人の突っ込みに対する担当者の説明にも問題があった。GXロケットを例にとると、開発費は全額税金という説明だったが、実際は半分以上を民間が負担している▼これまで密室で行われていた予算の査定を部分的にせよ国民の目の前で行った意議は大きい。世論調査でも「評価する」との回答が高い率を占めている。ただ、今回対象にしたのは3千事業のうちの450事業であり、残りは、作業過程が公開されるわけではない▼仕分けの手法などに関しても、専門家らからは多くの提案が出されている。これらを踏まえて完成度の高いものにして行きたい。
地球の周りを回る国際宇宙ステーションに、美しく光る物体がゆっくりと近づいて行く映像をご記憶の方も多いだろう。無人宇宙輸送機HTVである。52日間の任務を終えて、10月31日にステーションから切り離された▼一見、日常の宇宙開発業務のようにも見えるが、日本の宇宙開発にとって画期的なできごとであったことは間違いない。観測機器、宇宙ステーションで暮らす宇宙飛行士のための食料や日用品などを運びゴミなどを回収するが、このために技術の粋を尽くしている▼HTVはこれも日本が開発した大型ロケットH2Bで打ち上げる。秒速8キロで飛ぶ宇宙ステーションに10メートルまで近づいたら、その間隔を保って飛ぶ。つまり、宇宙ステーションにぶつけて壊さないための配慮だ。この時点で宇宙飛行士がロボットアームでつかんで、ステーションとドッキングさせる▼と文章で書けば簡単だが、このためにHTVは4個の飛行エンジンと28個の姿勢制御エンジンを持ち、それを自在に操っている。諸外国が注目するわけだ。すでに三菱電機がこのシステムをアメリカの人工衛星会社オービタルサイエンスから受注した▼HTVには空気を1気圧に保って、人が入れる部屋もある。今回実際にステーションから人が入った。これを発展させれば、将来の有人宇宙船になりうるとの期待がある。
政治への関心は、しだいに来夏の参院選に移っている。そうしたなかで、画期的な裁判所の判断が出た。9月30日、最高裁大法廷の判決である▼この裁判は、1票の格差が最大4.86倍だった2007年の参院選をめぐって選挙無効を求めた訴訟の上告審である。この日の判決の中で最高裁は、「選挙制度の仕組み自体の見直しが必要」と指摘した▼この判決では、公職選挙法は違憲との判断こそは示さなかった。したがって、選挙無効を求めた原告の上告そのものは棄却した。しかし注目されるのは、選挙制度を見直せというのは、15人の裁判官のうち10人の多数意見だということである。違憲と判断した裁判官も5人いた▼参院の選挙制度について、司法がこれだけ踏み込んだ判断を示すのは異例である。行政、立法がきちんと対応できるのか。いずれにしても新政権にとっては、また一つ、大きな課題を抱えこんだ形である▼民主党は、選挙制度に関しては、すでに先日の衆院選のときのマニフェストに書いている。衆院の比例代表の定数を削減し、参院もこれに準じて減らすと。まず衆院が先で、参院は2013年をめどにしている。順調に行ったとしてもである▼それにしても、定数訴訟が初めて起こされたのは1962年であった。それ以後、何度も起こされている。格差是正とは、こんなにも時間がかかるのか。
今回の選挙結果は、ある程度予測されていたので、それほど驚かなかった人も多いのではないか。筆者の場合は、8月中に投開票日が設定されたのは107年ぶりと聞いて、そちらの方にむしろ、へえーと思った▼この夏は、異常続きだった。日照不足に集中豪雨。地震もあった。そして新型インフルエンザである。国内の集団感染が8月30日までの1週間で1330件にのぼった。その前の週の1.5倍。学校の夏休みが明けて、さらなる拡大が心配される▼新学期の初め、通常なら生徒たちが一堂に集まって校長の話を聞くが、今年は校内放送で、といったニュースも流れてくる。では、流行のピークはいつか。厚生労働省が8月28日に発表したシナリオによれば、通常の季節性と同じペースなら9月下旬から10月初めになるという▼新型インフルの罹患率を通常のインフルエンザの約2倍の20%として計算すると、患者数は約2550万人、その1.5%が入院するとした場合、入院は約38万人になる。糖尿病患者や腎不全患者、妊婦、小児は重症化しやすい。10分の1の人が重症化するとすれば、重症者は約3万8千人に達する▼流行が夏場に起きたこともあって、ワクチンの備蓄量と、接種の優先順位決定、治療体制など、懸案はまだいくつも残されている。新政権にとって最初の大きな課題の一つである。
宇宙に四カ月半滞在した若田光一さんが帰ってきた。日本の実験棟きぼうを完成させるなど多くの仕事をこなした。とりあえずご苦労さまと言いたい▼それにしても、これまでの道のりは長かった。国際宇宙ステーションの建設は1984年に当時のレーガン米大統領が提案した。日本がこれまでにつぎ込んだ資金は約7600億円。さらに今後の維持費を毎年400億円負担しなければならない▼これだけの金をかけてどれほどの成果を得られるのか危ぶむ声も少なくはない。宇宙ステーションの運用は2015年までと限られている。しかも地上とステーションを往復するスペースシャトルは来年退役する。その後はロシアの宇宙船に頼るしかない▼宇宙といっても、ステーションは地上から400キロくらいの所を飛んでいる。極端な例えをすると、東海道新幹線のレールを垂直に持ち上げると、岐阜羽島あたりが宇宙である。それでもテレビ中継で若田さんの縄跳びで分かる通り、無重量である▼これを活かすのが、目的の一つである。若田さんは着陸後45日ほどのリハビリが必要である。無重量状態では骨が早く減るなどの影響が出るからで、これを利用して骨粗鬆症の薬の効果を短時間で判定することが可能とされる▼多くの資金、時間が限られているという条件下でいかに成果を上げるかが厳しく問われている。
小中学生に携帯電話を持たせることの可否については、以前から議論があったが、石川県議会が規制条例(いしかわ子ども総合条例改正案)を全国のトップを切って6月末に可決した。来年1月から施行される▼条例は、防犯や防災、その他特別な目的以外で持たせないように努めるという努力義務を保護者に課した。小中学生の携帯に関しては、すでに全国の9割以上の学校が校内への持ち込みを原則禁止している。が、今回は校内外を問わずということで、踏みこんだ▼一方、県側も有害サイトの閲覧を規制するフィルタリング機能強化を提案し、可決された。審議過程では、もちろん議論があった。反対意見は、家庭や学校が個別に判断すべき問題だといったものである▼この条例について、識者の間では、一定の評価はするものの、インターネットの方がむしろ問題だとの指摘もある。日本の子どもたちは、携帯などを通じてネットに自由に触れている。ただ、学校裏サイトがすべていじめの場だと思っている人がいれば、それは誤解である。いじめは、ネットが登場するはるか以前から存在した▼それはともかく、ネットを「得体のしれないもの」と感じている親は少なくない。犯行予告は最近、「ウィキペデイア」にものった。いたずらに不安に思うだけでなく、子どもがアクセスしているサイトを親も見てはどうか。
5月21日に始まったばかりの裁判員制度だが、最近報道された裁判にからむ2件のできごとで、突然クローズアップされた。この制度の周知には役立ったかっこうだが、自分が裁判員に選ばれたらどうしようと、改めて不安に思った人も多いのではないか▼ひとつは、足利事件である。服役中だった62歳の男性が、再審開始決定前に釈放されるという異例の事態である。DNAの再鑑定で、冤罪とわかった。逮捕から17年半ぶりである。当然のことに新聞は大きく取り上げたが、その記事で、多くの新聞が裁判員制度とのからみに触れた▼この受刑者は、いったんは自白したが、一審の途中から否認に転じた。そこで、新聞は制度に触れ、「冤罪が繰り返されてきたことへの批判が、裁判員制度が実現する一因ともなった」とか、今回の決定が「裁判員制度に参加する市民の目を意識した」などと書いた▼もう1件は、時津風部屋の力士暴行死事件である。この種の事件も、裁判員が入ることになる。起訴事実を否認していた前親方に対し、名古屋地裁は懲役6年を言い渡した。兄弟子らの裁判も同じ裁判官が担当したが、裁判員だと別々の人がやるので、異なる判断がされる可能性があるという▼裁判員制度については、専門家の中にも根強く反対する人がいるが、いずれにしても裁判員に指名される人はご苦労なことである。
新型インフルエンザの大流行がいずれ起きると警告されたのは、もう何年も前のことである。たとえば日本の感染症監視の総元締は「すでに導火線に火のついた状態」と2005年10月に語った。それが、いよいよ現実のことになった▼今回、メキシコから一報が入ってから世界の感染者が2千人を超えるまでにそれほどの時間はかからなかった。アメリカ、ヨーロッパ、そしてアジア、オセアニアにも飛び火した。警告では、鳥インフルが変異したものということだったが、実際は豚だった。これは意外ではなく、起きて当然である▼あえて予想と異なることといえば、毒性はさほど強くない、感染者は若い人に多いなどの点である。心構えはできていたはずだが、いざ現実となると、やはり一定の混乱は免れない。WHOとメキシコ、厚生労働省と横浜市のやりとりなどが話題になった。機内検疫で入国者が健康状態を記入した書類の内容を自治体に伝えるのが遅れるなどの問題も出た▼思わず首を傾げたくなるケースもあった。ある国でメキシコ人を感染の兆候がないのに隔離したり、移民を締め出そうという論調が飛び出したり、豚30万頭以上を処分するなどだ。この騒ぎのなかで、一つの前進があった。台湾が、オブザーバーではあるが、WHOの総会に参加することになった。対中融和の大きな一歩である。
日本政府の誤報が世界じゅうを駈けめぐった。北朝鮮の「衛星」打ち上げ予告期間の初日、4月4日の正午過ぎで ある。5分後に取り消したが、ニュースはすでに流れてしまっていた▼誤報の原因は、コンピューターに不具合が生じたためという。そういうことだと、これからも起こりうる。米軍のデータとすり合わせるなどのチエツクが重要だ。日本への落下物があるとすると、一刻の猶予もないこともわからないではないが、度重なると、世界の笑い物になる▼それはそれとして、もっと根本的な問題は、打ち上げそのものである。日本は早速、国連安全保障理事会の議長国メキシコに緊急会合の開催を要請した。実際に緊急会合が開かれた。今回の発射は06年7月と10月の安保理決議に違反しているということで日米は一致している▼北朝鮮は、人工衛星を軌道に乗せることに成功したと言っている。しかし、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)によれば、今回、軌道に乗った衛星はないという。発射したのは、長距離弾道ミサイル「テポドン2」の改良型と見られる。日本が追尾をやめた時点で日本の東約2100キロの太平洋上を飛んでいた▼この騒ぎで拉致事件への関心が薄まるのではないかという危惧もあるという。それは、あってはならない。日本にとって追加制裁の余地があまりないというのも、惜しい。
南太平洋の国や島と言えば、以前は楽園、今は水没の危機という言葉が浮かんでくる。その南の国から、一 国の首相が来日した▼ニウエという、人口1788人の国。そこのタランギ首相(58歳)である。この5月に北海道トマムで「太平洋・島サミット」を開く。その準備などのためである▼タランギ首相はツバルなども加盟している「太平洋諸島フォーラム(PIF)」の議長も兼ねている。北海道でのサミットでは、麻生首相とともに共同議長を務めることになっている。サミットでは環境・気候変動の問題のほか、人間の安全保障に関わる問題や、日本と島嶼国との人的交流の強化などについても話し合われる。同氏は麻生首相、中曽根外相と会談したあと、筆者らと会見した▼会見では、地球温暖化と観光が主な話題になった。地球温暖化については、同氏は、先進国の人たちは地球温暖化というと二酸化炭素のことを考える。しかしそれで地球がどうなるのか、あまり実感がないのではないか。しかし南太平洋では、超大型のハリケーンに襲われるなど、現実に被害を受けている。変化をひしひしと感じていると語った。耳の痛い思いだった▼観光については、日本からの旅行者は人口を考えるとまだまだ非常に少ないと。この際、南太平洋へのツアーでも組んで、気候変動の怖さを肌で感じてみるか。
新型インフルエンザの世界的大流行がいつ始まってもおかしくないと言われ始めてからかなりの日にちがた った。杞憂だったのか。しかし最近の行政の動きなどを見ていると、いよいよかなという感じもしてくる▼例えば東京都は先月、「新型インフルエンザに予防の一手。みんなで備えて、みんなで防ぐ」というリーフレットをつくった。実際、年明け以降、インドネシアやベトナムのほか中国各地でも鳥インフルエンザの感染者が増え始めている。これが人から人へ感染する新型インフルエンザに変異すると、世界的大流行、パンデミックを引き起こす恐れがある▼過去の例では、例えば68年の香港かぜでは100万〜400万人が死亡している。東京都の対策は20年度中に複数の抗インフルエンザウイルス薬を、罹患が想定される400万人分備蓄し、今後さらに拡大する、医療従事者用の防護服を五十万セット備蓄するなどである▼しかし全体的にみて、自治体の足並みがそろっているとはまだ言えない状況のようだ。都が昨年10月時点で行った都内の62市区町村に対する調査では、流行時に初期診療を行う発熱外来の設置を決めているのは10自治体に留まっている▼結局、個人としては感染しないための自衛が求められる。流行が迫っているのであれば、不織布のマスクぐらいは今のうちに買っておくか。
今年は、例年とは違って大きな節目の年である。100年に一度とも言われる経済危機への対応はもちろん のこと、他にもさまざまな予定をかかえている▼ちょっと数え上げるだけでも、衆議院議員選挙、日本人宇宙飛行士の長期滞在、そして第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)などが控えている。衆議院は解散がなかったとしても、9月10日で任期満了となる。宇宙は若田光一さんの宇宙ステーション長期滞在などを予定▼COP15は地球温暖化対策のルールを決める待ったなしの会議となる。現在のそれは97年のCOP3での京都議定書で決められているが、その対象期間は2008‐12年である。したがってポスト京都議定書と呼ばれる13年以降の枠組みをつくらなければならない。昨年のCOP14では結局まとまらなかった▼それが12月の7日から18日までコペンハーゲンで開かれるCOP15で大詰めを迎える。焦点は温暖化ガスの最大の排出国であるアメリカと、経済発展で排出量が増えている中国やインドなどの途上国に義務を課すことができるかどうかである▼ブッシュ政権が消極的だったのに対し、オバマ次期政権は積極姿勢に転じるとの見方もある。あとは中国やインドなどの数値目標をきちんと盛り込めるかである。日本にとっても、もちろん正念場となる。
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