暮らしと環境・エネルギーの情報紙「燦」(サン)

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大樹小樹

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2008年12月

 猫好きと犬好きとでは、性格がかなり異なるとされる。しかしその猫好きにしても、野良猫に餌をやること の是非という話になると、いろいろな意見が出るのではないか▼東京都荒川区議会の建設環境委員会が、飼っていない動物への悪質な餌やりを禁止する条例案を可決した。罰金付きで制限するのは全国でも初めてである▼駐車場などに野良猫を沢山集めて餌をやっている人をたまに見かける。鳴き声がうるさいし、フンの悪臭もある。「餌をやるな」と大きな張り紙がしてあったりする。それでも意に介しない人もいるらしい▼荒川区の条例案は、「良好な生活環境の確保に関する条例」という。言い換えると、餌やりで生じる鳴き声や悪臭を生活環境悪化原因ととらえている。対象は猫だけに限らず、住民が問題だと感じるのであれば、動物全体が対象になる▼これで思い出すのは、ある日刊紙に載ったエッセイである。女流作家が家の近くにやってくる猫に餌を与えている。ところがこの猫が妊娠して子猫を産む。するとその人は、多くは飼いきれないと、子猫たちを谷底に向けて投げ捨てて殺す▼この文章には、かなりの反響があったという。子猫を殺すのは身勝手だ。親猫に餌を与えるなら、殺さずに子猫にもやれば、という意見が多かったように記憶している。こういう論争が起きるのも平和だからか。

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2008年11月

 日本人は祭好きといわれる。自分たちの伝統行事はもちろんのこと、異教徒の行事の日にも自分なりの理由 をつけて遊び歩いたりしている。しかし、ハロウィーンとなると、若干ニュアンスが異なる感じもする▼たとえばJR川崎駅前のパレードでも、まだ10年ちょっとのものである。やはり日本にいる外国人のものという感じが強い。今年も、10月31日に先立つ29日、JR大阪環状線の車両を、仮装した外国人らが占拠した。一般客は2時間以上乗れなかった▼東京でも昨年の騒ぎにこりた山手線で厳しい警戒がされた。全29駅に鉄道警察隊との連名で日本語と英語のポスターがはられた。集会や騒ぎは禁止。違反すれば処罰すると▼アメリカでは、再び悲劇が起きた。お菓子をもらおうと民家に近づいた12歳の少年が銃で撃たれ死亡した。犯人は昨年、強盗に襲われたことがあるというから、タイミングも悪かったというべきか▼ルイジアナ州に留学中の16歳の日本人高校生が射殺されたのは、今から16年前である。この事件には後日談がある。撃った男はガンマニアで野良犬を撃ち殺したりしている▼ルイジアナ州では、屋内への侵入者に対しては発砲が容認されているという。現場は玄関先で、「屋内」だった。それにしても、銃社会はなんとかならないものか。オバマさんお願いしますよ。

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2008年10月

 中国が宇宙遊泳に成功した。有人飛行3回目の「神舟7号」によってである▼これは飛行士3人を乗せて日 本時間9月25日午後10時10分、内モンゴル自治区の酒泉衛星発射センターから国産の大型ロケット「長征2号F」で高度343キロの円軌道に打ち上げられた▼船外活動は日本時間27日午後5時40分過ぎに行われた。軌道船のハッチをあけて船外に体を乗り出し、手を振ってみせた。国際宇宙ステーション(ISS)などに比べれば初歩的に見えないでもないが、中国にとってはそれなりの意義がある▼北京五輪閉幕から間を置かず、年末の改革開放30周年記念大会を控えてというタイミングもあるが、それはさて置き、中国は2020年を目標に独自の宇宙ステーション建設を進めている。それに向けての大きな一歩だったということはできる▼ともかく、いずれは宇宙科学研究で世界のトップクラスにというのが目標である。すでに月探査衛星を打ち上げたし、火星探査なども計画している。大型ロケット長征5号の開発も進めており、4カ所目の発射センター建設も決めている▼手放しで称賛できないのは、中国に限らず宇宙開発と軍事利用は紙一重であることだ。げんに昨年、弾道ミサイルによる衛星破壊実験を行っている。今後の軍事面での展開は明らかでないが、平和利用に徹してほしいものだ。

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2008年9月

 猛暑もようやく峠を越えたがこの夏の気候は異例ずくめだった。8月末まで日本列島に台風の上陸はなかったものの、局地的な大雨で多くの死者、行方不明、住宅などの被害が出た▼台風の上陸がなかったのは、2000年以来8年ぶりである。一方で大雨である。全国59地点で1時間あたりの降水量が観測記録を更新した。気温の方も異常だった。35度以上の猛暑日や30度以上の真夏日が多かった▼豪雨の頻発は「ブロッキング現象」として説明されている。簡単にいうと二つのジェット気流が流れている高層の大気に「よどみ」ができ、ここへ地上の暖かい湿った空気が入り、上昇気流が起きやすくなる。これが2カ月も続いた▼アメリカでは3年前のハリケーン「カトリーナ」により大きな被害が出ている。今年また「グスタフ」が直撃した。日本の国交省は神戸の都賀川が増水して5人が死亡した事故を受けて、全国河川の緊急調査を行った。川沿いに遊歩道などがある河川のうち25で過去に増水事故が起きている。君子危うきに近寄らず▼この異常気象を地球温暖化と結びつけて考えたいところだが、その辺のところはにわかに断定することは避け、一歩下がって判断した方がよさそう。ただ言えるのは、これからも同じことが繰り返される可能性を考えておかなければならないだろうということだ。

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2008年8月

 国際宇宙ステーション(ISS)の日本の実験棟「きぼう」の建設に大きく貢献した星出彰彦さんら7人の 乗組員がそろって7月27日に日本記者クラブで会見した。日本での会見はこの1回限りということもあり、現役の記者も多く詰めかけた▼1時間と限られて、クルーの紹介もそこそこにいきなり質疑に入った。今回きわめて特徴的だったのは結果的に、技術の話はほどほどに、地上で生活する普通の人が知りたい点に特化したことである。訓練と実際では違うことがあるか、地球を見て戦争や環境問題を考えたか、宇宙でこわい思いはしなかったかなどなど▼答える側も、本音で応対した。帰還の際は、ミッドデッキにいる飛行士は、座席に縛り付けられているだけで、やることがない。そういう時、過去に起きた大事故を思い出すといった答えが出た。過去の会見では、もっと公式的な回答が多かったように思う▼それにしても、7人の連帯感、チームワークの良さは抜群である。これに対しては「かけがえのない家族だと思っていますから」と。宇宙の苛酷な環境に対応する厳しい訓練が人間関係をつくるのか▼宇宙飛行士希望の子どもたちへは、という問いには、冒険心を持つ、夢を達成できるという信念、そのためになんでも献身的にやるという強い意欲…だと。若い人に直接聞いてほしい会見だった。

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2008年7月

 落書きが止まらない。イタリア・フィレンツェの世界遺産登録地区にあるサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂では、日本の産業大学や女子短大の学生によるものが最近話題になったが、それ以外にも日本語の落書きが沢山あるという。どこから見ても均整のとれたこの建物にはふさわしくない▼国内でも過激なものがある。同じ時期に上越新幹線の車体に大きな落書きがされ、ためにこの列車は運転を取りやめた。その結果、約500人の乗客が迷惑を蒙った。車両置き場に壁を乗り越えて侵入したらしいというから、ご苦労なことである▼短大生は学校から厳重注意、大学生は2週間の停学。ついでに2年半前のが発覚した高校野球部の監督は解任。このくらいの罰を受けるのは当然だろう。国内ならいいというわけではないが、海外の、それも世界遺産でやられると、同じ日本人として恥ずかしいと思う人も多いようだ。イタリアの修繕責任者に日本からのメールが届いている▼大聖堂にはクーポラという円屋根がある。階段を登りきったところが展望台になっているが、ここはとくに多い。ほとんどはイタリア語、英語、スペイン語などだという。これはなんとなく分からないでもない。しかし日本語が全体の1割ほどあるという(共同電)。日本の人口は世界の1.9%、落書きは10%では出しゃばり過ぎか。

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2008年6月

 客の食べ残しを使い回しした問題は、料亭が廃業して一段落したが、今度は医療機関における採血器具の使い回しが続々発覚している。実は、衛生面ではこちらの方がはるかに大きな問題なのである▼乳幼児期に予防接種の注射器を使い回しされたために、のちに肝炎を発症する事故が起きている。同じ針を刺された人たちのなかに肝炎ウイルスを持った人がいて、注射器にウイルスが入り込み、これが次に刺された人の体内に入った▼ついこの5月にも、こうして肝炎にかかった患者のうち、広島の人たちが国の賠償を求めて新たに提訴した。この危険性は、少なくも1948年にはわかっていたものの、国は適切な指導をしなかったとされる▼今回は、まず島根県で問題になった。採血を受けた一人の患者が、いつもより痛いといった。同じことがもう一度あったので調べたら、針先が摩耗して丸くなっていた。先端が鋭利ならそれほど痛くないが、丸くなっていると痛い。この針は1カ月以上、複数の患者に使っていた▼器具の構造自体にも問題はないのか。この器具は、先端のドラムに六本の針が入っていて、その都度、ダイヤルを回して新しい針を出す仕組みである。人間は、時に思い違いをする。ダイヤルを回したと思いこんでいると、針は取り換えられず、次の人に使われることになる。看護師も人間である。

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2008年5月

 「呼吸の日」をご存じでしょうか。呼吸器の慢性疾患であるCOPDに関心を持ってもらいたいと、5月9日をその日と定めた▼この病名、日本語では慢性閉塞性肺疾患。それよりもCOPDの方が覚えやすい。以前、慢性気管支炎と呼んでいた病気と、肺気腫という病気を合わせてこういう病名にした。ちなみに、慢性気管支炎は慢性の咳、痰を主徴とする病気に対する診断名であり、肺気腫の方は肺胞壁の破断という病理組織的状態を言っている▼国内で五百万人以上の患者がいると推定される。特に40歳以上の有病率は5.8%と高く、中高年に多い病気である。主な症状は、慢性の咳、痰、それに息切れ。最大の原因は、たばこ。だから、生活習慣病の一つなのである。日本では平均寿命が延びており、かつ喫煙率が高い。したがってCOPDが大きな問題になる▼ある調査によれば、COPDと診断されてもまだ、たばこをやめない人が多い。35%の人が吸い続けている。生活態度はなかなか変わらないということ。もう一つの問題は、ひどい症状で日常生活にも支障があるほどなのにCOPDと診断されていない、従って適切な治療を受けていない人が沢山いることである▼きちんとした治療を受ければ、かなりコントロールできる。逆の言い方をすれば、それを知らずに苦しんでいる人が多いのが問題である。

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2008年4月

 国際宇宙ステーションでの日本の作業が、いよいよ本格化した。土井隆雄さんがスペースシャトル・エンデバーから乗り移り、日本の実験棟「きぼう」の設備の一つ、船内保管室を取り付けた▼きぼうは、大きく3つの施設からなる。今回取り付けた、実験機器などを収めた船内保管室、細胞培養などをする船内実験室、宇宙から地球などを観測する船外実験プラットフォームである。それに、ロボットアームが加わる▼次は星出彰彦さんが行って船内実験室を組み立てる。星出さんは日本時間6月1日に打ち上げられる。そのあと、ステーションの長期滞在メンバーに日本人が初めて加わる。若田光一さんで、12月に行き、3〜4カ月滞在し、各種の実験に取り組む▼土井さんは、関係者が驚くほど、完璧にやってのけ、日本時間3月27日に無事、地球に帰還した。土井さんは、保管室の壁に日の丸を張りつけた。言ってみれば、宇宙空間における日本領土というわけである。その辺は、それぞれの国の判断に委ねられている▼土井さんは、計画にないことを一つやった。ブーメランを飛ばしてみたのである。地上と違って微小重力の宇宙空間ではどうなるか。矢張り飛んだという▼ちょっとユニークだったのは、NASAの対応である。この映像の地上への送信を禁じた。実験計画として事前の届け出がなかったというのである。

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2008年3月

 未成年者の喫煙に対するおとなたちの関心が、従来になく高まっている。そのひとつが、たばこ自動販売機用の成人識別ICカードの導入である▼1日から、全国に先駆けて鹿児島、宮崎両県下で導入された。7月までに、全都道府県で稼働する。この機械をおとなが使うためのタスポカードの申し込みは、2月末現在ですでに約73万人に上る▼このシステムは、かなりの威力を発揮するはずである。というのも、未成年者の入手ルートは、自販機が圧倒的に多いからである。じつは、厚生労働省は、こういうことも調べているのである。それによると、約80%が自販機だという。次がコンビニ、スーパーなど。店員はなぜか、断らない▼未成年者の喫煙は、大きな問題である。若い時に始めれば始めるほど、依存症になりやすいのである。常習喫煙になる比率は、16歳未満で始めた人は20歳以降で始めた人の2倍という研究結果もある▼たばこが肺がんの原因になることはすでに常識だが、それだけではない。がんだけでも、肺のほか口腔、食道、胃、腎臓、ぼうこうなど多岐にわたる。循環器への影響、女性の不妊になるリスクを高めるなどなど。最近のニュースでは、緑茶に含まれるカテキンに胃がんなどの予防効果があるのが、たばこで打ち消されてしまうという▼おとなたちも、この機会に禁煙してはどうか。

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2008年2月

 中国産の食品などの問題点はかねがね指摘されてきたが、今回の冷凍ギョーザ騒ぎはちょっと異質だった。早い段階で日本の警察も動いていた▼やはり、何者かが意図的に殺虫剤を入れた疑いがますます強まってきた。すでに2月6日、調査のために訪中した日本政府代表に中国の高官が「中日友好関係の発展を望まない少数の分子が極端な手段をとった可能性を否定できない」と述べたという。国際テロということか▼それにしても、今回の事件で、問題点が一気に噴出した感がある。食中毒と言って届けたのが個人だったせいか、保健所が適切に対応しなかった。情報はJTに寄せられていたにもかかわらず、原因の究明が遅れたなど、数え上げればキリがない▼もっとひどかったのは一部メデイアの暴走である。たとえば駅売りを中心にしている夕刊紙が一面トップで故意説を報じた。会社帰りなどの人が争って買ったが、本文をいくら読んでもそのような見出しを付けた根拠が見当たらなかった▼北京オリンピックに行きたいが、食事はどうするの?という会話が日常的になっている。大きな書店には、食べてはいけない中国の食品といった本が何種類も平積みされている。だが、テロということになると、状況は全く変わってくる。日本人の健康はもとより、日中関係にも大きく響く。捜査当局に期待するしかないか。

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2008年1月

 現在の閣僚と民主党の「次の内閣」大臣によるディベートが日本記者クラブの人気行事のひとつになりつつある。鴨下一郎環境相と参院議員で「次の内閣」環境大臣の岡崎トミ子さんによるそれが去年の12月に行われた▼進め方は、これまでに何回か行った党首討論や自民党総裁候補によるものを踏襲している。まず二人が考えを述べ、次に反対質問。そしてしめくくりの言葉。第2部はクラブ代表の質問とフロアからのもの。計2時間のプログラムである▼鴨下氏はバリ会議(COP13)の日本代表をつとめて帰国したばかり。一方の岡崎氏も環境通である。論戦はまずバリ会議の評価から始まった。なぜ2013年以降の数値目標を出せなかったのかといった議論である▼ことしから始まる第1約束期間に日本は確実に達成できるのか、削減方策の詰めは、といった国内問題から、排出量の多い中国、インド、脱退したアメリカ、そしてEUをどう説得するのか、そして来るべき洞爺湖サミットにも話が及んだ。鴨下氏は現職だけに具体性がある。一方の岡崎氏は参院選のマニフェストで見たような話もあったが、やはり選挙に勝利した勢いに乗っていた▼いわば架空のシチュエーションにおけるディベートではあるが、両者とも真摯に討議する態度に好感が持てた。両党間の政策論議もこの調子で進めてはどうか。

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