暮らしと環境・エネルギーの情報紙「燦」(サン)

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大樹小樹

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2007年12月

 「日本の15歳学力全科目で後退」とか、「科学への関心、日本最低」といった大見出しで12月5日付の各紙朝刊が報じた。国際学習到達度調査というのを経済協力開発機構(OECD)が3年ごとにやっている▼オリンピックの競技じゃあるまいし、どの分野ではどこの国の下だというコメントはこの際必要ではない。問題は、日本の子どもたちが育って行く過程で、教育に携わるものがどのように手助けして行くかということだろう。その意味では、どういう教育をしている国の子がどうなっているかというデータは参考になる▼個人が、社会と調和を保ちつつ物心両面で充実した人生を送る術を教えるのが教育の主要な目的のひとつであるとすると、ひとつ気になるデータがある。日本の15歳生徒の環境問題の認識度がOECD平均よりも低いというくだりである▼個人と社会との関係で、社会とは、地域や自国だけではない。地球と言い換えてもいい。社会が健全であって初めて個人の幸福も保障される。この調査は日本の子どもの科学への関心の低さも指摘しているが、このことと環境への関心の低さは大きな相関がある。科学への関心の低い子は、環境問題も楽観視する傾向がある▼科学への関心が低いと見なされた子は多分、科学の面白さを知らないのではないか。まず教える側が科学の面白さを実感してほしい。

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2007年11月

 食品の偽装が相次いだと思ったら、今度は建材。世の中いったいどうなっているのかと思う毎日だが、そんな中で、「かぐや」を始めとする月探査は、浮世の憂さをしばし忘れさせてくれる▼月探査といえばアポロと反応するのは、中高年の証拠か。あれからもう、40年近くになる。冷戦下だった。アメリカとソ連のどちらが先に人間を送りこむのか、などと騒いだ記憶がある。結局アメリカが行って月の石を持ち帰った▼いろいろなことが分かったが、謎も深まった。それを解こうというのが、今回の無人探査である。日本が9月14日に打ち上げると、すかさず中国は「嫦娥」を10月24日に打ち上げた。チャンアと読み、月に住む仙女だという▼かぐや姫を模したのも、名前からして詩情があるが、かぐやの場合は14種類もの観測装置を積んでいる。宇宙観測システムとしては異例の欲張りようである。両者とも、月周回軌道への投入に成功した。アポロが降りた場所は、地球から見える側で、それも平らな「海」の部分が多かったのだが、今回は両方とも地球から見えない部分も観測する。来年はインドも探査機打ち上げの予定である▼アメリカとソ連の2大国が競っていた時代とは隔世の感がある。ソ連はロシアになったしアメリカはテロとの闘いに明け暮れている。それは別として両探査機の成功を素直に祈りたい。

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2007年10月

 10月1日から始まった緊急地震速報は、それ自体は比較的良く知られるようになった。しかし、いくつかの問題点をかかえている。せっかくの速報が瞬時に広く伝わるとは言いがたいといった問題である▼今のところ、テレビやラジオが先行しているように見える。一方、防災行政無線の方は、体制が整っていると言えるのかどうか。もちろん、各方面の努力は続けられている。携帯電話、CATV、個人用の専用端末などが整備されている。しかし、たとえば地下街など人の多く集まるところではどうか。準備が間に合わない、伝えた場合のパニックが心配といった理由が聞かれる▼一方で、今の「速報」を「警報」に格上げしようという動きもある。そのための法整備を検討中という。しかし、皮肉なことに本格運用開始時刻の6時間40分ほど前に箱根で震度5強を観測した地震では、本格運用していても、ほとんどの地域で速報が間に合わなかった計算になるという▼いずれにしても、初期のP波が来てから主要動のS波が来るまでの間は数秒から数十秒の間である。この短い時間内に身の安全をはかるためにどういう行動をとればいいのか。家庭では、職場では、そして人混みでは…。速報の存在がかなり認知された今、次は速報を受けての身の処し方を早急に徹底してもらいたいような気もする。

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2007年9月

 那覇空港で8月に炎上した旅客機に関して新たな疑問が出ている。スラット(可動翼)内でボルトを締め付けるナットの径が、旧型機のそれよりも小さいのはなぜか、という疑問である▼ナットの径は、ボルトが通っている穴よりも小さい。したがって、ワッシャーと呼ばれる留め具を付けなかった場合、ボルトが抜け落ちる可能性が常にある。事故機も、ナットが付いたままの状態でボルトが抜け落ちていた▼事故機と同系列の飛行機の緊急点検の結果エアーニッポンの1機でワッシャーがなかった。ボルトが抜け落ちて燃料タンクを傷つける恐れがあった。この飛行機は1月に就航したばかりで、国内ではこの部分をいじっておらず、メーカーのミスである可能性がある▼人間のやることは常に100%完璧というわけにはいかない。ワッシャーを付け忘れることも皆無ではない。ミスがあっても事故につながらないようにするのがフェールセーフの考え方である。せめてナットの径が大きければ、ボルトは脱落しなかったろう。旧型機は、特注の大きなナットで固定していた▼なぜ小さな径のナットに変えたのか。737型機は良く売れている。世界で5千機以上が就航している。量産のために、入手しやすいナットを使うことにしたのではないかとの見方も出ている。設計思想にまでさかのぼって議論する問題だ。

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2007年8月

 中越沖地震からの復興が進んでいる。ボランティア活動のために集まった若い人たちの姿などを見ると、日本もまだまだ大丈夫かなという感じがしてくる▼一方で、ショッキングな映像も沢山あった。そのひとつが青々と育つ水田を背景に、もう農業は続けられないと語る中高年の農業人の嘆きである。崩壊した建物の下敷きになって農業機械がすべて壊れてしまった。買い換える資金はないというのである▼同じころ、日本のコメが4年ぶりに中国の店頭に並んだというニュースが伝えられた。再開自体はすばらしいが、これとて、まだ手放しで喜べるところまでは行っていないのも事実である。というのも、今回はコシヒカリとひとめぼれ合わせて総量24dで、値段は中国の一般的なコメの約20倍。買うのは北京や上海の富裕層が中心。日本の農水省が今回の売出しに向けて5千万円の宣伝費を投じたなどの背景がある。むろんこれは第1弾であり今後に期待したい▼日本にはうまいコメがあり食品衛生上の安全性も高い。今回中国側は害虫駆除の徹底を求めたというが、お客さんの要望に応えるのは当然であろう。コメ輸出再開を、「攻める農業」の重要な一歩ととらえる見方がある。一方で相手は見返りに生鮮野菜などの輸入解禁を求めている。「攻め」には足元を固めることが重要なのは言うまでもない。

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2007年7月

 今年も、8月6日と9日が巡ってくる。毎年のことではあるが、とくに今年は話題になることが多かったのではないか。防衛大臣の発言もその一つ。アメリカ政府高官は相も変わらず原爆投下を正当化するようなことを言ったという外電も伝わってきた▼一方で日本の天皇が、核物理学者たちの集まりで、核物理の研究は大いに進めるべきだが、兵器に使うのは絶対反対という旨のあいさつをされたという。ノーベル賞を受賞した小柴昌俊氏がある会合で披露した。「こういうことをきちんと言う国家元首、あるいは象徴が、どこの国にいますか」と小柴氏▼もう一つ。アカデミー賞ドキュメンタリー映画賞を受賞しているスティーヴン・オカザキ監督の「ヒロシマナガサキ」が、7月末に公開される。25年の歳月をかけて完成したドキュメンタリー映画である▼英訳された「はだしのゲン」に触発されたという日系3世の同監督が日本で500人以上の被爆者に会い、取材を重ねた。そのうちの14人と、実際に原爆投下に関与した4人のアメリカ人の証言を軸に、記録映像や資料を交えて広島・長崎の真実を包括的に描いたという▼ちなみにこの作品は、8月6日には全米に向けてテレビ放映される。観たアメリカ人たちはどういう反応を見せるのか。日本での公開は7月28日から10月5日まで岩波ホール。

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2007年6月

 首都圏を中心に猛威を振るったはしかは、少しは鎮静化の兆しが見えてきたようだ。休校していた大学や高校などが再開し始めた。それにしても、4月から5月にかけての休校は、全国で78校。学年・学級閉鎖を含めると103校にのぼった。患者数は1264人と報告された▼ワクチンの在庫不足が心配され、厚生労働省が予防接種の必要性を見極めるようにとの通達を出したり、免疫の有無を調べる検査薬が国産だけでは追いつかなくなって、輸入が急増した。5月29、30日の2日間で昨年1年間の3倍強を納入した検査薬販売会社もある▼はしかは幼児や子どもの病気と思われてきた。が、今回は10代や20代の感染が目立った。若者は行動範囲が広いから感染が飛び火する恐れがある。今回この年代に流行したのは、ワクチンの接種率の低下が影響している▼はしかの予防接種は1976年に義務づけられた。しかし、新三種混合の副作用が発生して、94年以降は強制から努力義務に変わった。ワクチンは保険の対象外で、3千円前後かかる▼予防接種は集団防衛、すなわち社会全体の感染症リスク低減の意味がある。が、接種を受けた人に副作用が出る場合もある。このことも以前から議論になってはいた。記憶が薄れないうちに予防のあり方やワクチンの供給体制などを洗い直してみる価値はある。

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2007年5月

 「バイオガソリン」の試験販売が国内で始まった。4月27日に、首都圏の50のスタンドで開始した。ガソリンに、植物を原料につくったエタノールを3%混ぜたもの。植物は大気中のCO2 を固定するから、それを燃やしても大気中のCO2 総量は増えることはないというわけだ▼価格は国の補助金などでレギュラーガソリンと同じに設定した。今年度の販売目標は17万キロリットルで、2010年度には全国展開し、ガソリン販売量の2割にあたる1200万キロリットルに拡大する。燃費はほんの少し高めだが、問題になるほどではない。エンジンへの影響も大丈夫という▼今回のは、小麦からつくったバイオエタノール化合物のETBEをガソリンに混ぜたもの。国産品ではなく、フランスからタンカーで運んできたというのが気になるところだ。ほかにも問題がある。原料のトウモロコシなどが食料と競合するため、価格が高騰する。燃料にとられてしまって食料難が起きるのではないかという危惧もある▼国内でやるとすれば、廃木材などを発酵させてエタノールをとるのが一つの方法と考えられるが、そうした原材料をエタノール化プラントのあるところまで燃料を使って輸送したのでは、あまり意味がない。例えば森林の保全に有効な間伐とバイオエタノール利用をうまくマッチングさせるといった妙手はないものか。

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2007年4月

 地球温暖化の大きな原因であるCO2を、地中に閉じ込める技術が、かなり現実味を帯びてきた。EUが、 火力発電所の排ガスから分離して地中に封じ込める技術の実用化を進めており、2015年までに12の実験プラントを立ち上げる▼続いてアメリカも同様の技術開発を進めることにした。発電にしても、CO2を発生しないか、比較的発生量の少ないたとえばバイオマスなどが望まれるが、それが普及するまでのつなぎとして、大気中への放出を抑える方法が求められている▼火力発電に限らず、たとえば高濃度のCO2を含む天然ガスを採掘するときにCO2を分離して地中に戻す必要性などが出てきた。EUは現在、デンマーク・エスビアウの石炭火力発電所で排ガスからCO2を分離する実用化実験を進めている。地中貯留についてはスペインなどが海底油田での実験を進めている▼アメリカは、エネルギー関係の有力議員が研究開発支援のための法案を準備。政府や産業界も協力する見通しである。わが国でもすでに、「地球環境産業技術研究機構(RITE)」が03年7月から05年1月まで新潟県長岡市で地下の帯水層にCO2を1万トン注入し、長期にわたる環境への影響などを調べている▼実現のカギを握るのは、主にコストの問題。EUでは、既存の技術の半分程度に抑えるのが目標だ。

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2007年3月

 高病原性鳥インフルエンザの蔓延が新型インフルエンザの発生につながるのではないかと懸念されている。も しもそうなると、スペインかぜの再来どころか、史上最悪の惨事になる恐れがある▼高病原性鳥インフルエンザが日本でも、宮崎県と岡山県で再燃した。この鳥インフルエンザそのものも、人に感染する。03年にみつかって以来、すでに11カ国に及び、160人以上が死亡したと伝えられる。新型インフルエンザはこれとは異なり、ウイルスが変異して人から人へ感染するようになるものをいう▼そうなると、爆発的に流行する恐れがある。1918年のスペインかぜでは、世界じゅうで約4千万人が死亡、日本では39万人が死亡した。今の社会状況は、そのころとは全く違う。人口集中、大量高速輸送を見ても分かる通りだ。▼国立感染症研究所によれば、東京在住の1人の日本人が海外で感染して帰国すると、最悪の場合、10日後には1都4県に広がり、感染者は12万人に達すると試算している。当然、交通封鎖も検討される▼新型の大量発生に備えて、抗ウイルス薬タミフルの備蓄が進められている。ふつうのインフルエンザでタミフルを使った未成年者が、因果関係はともかく、マンションの上の階から転落したり道路に飛び出て死亡したりする事故が起きている。が、やはり、備えは不可欠だ。

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2007年2月

 地球温暖化が以前予測されたよりも加速されそうだとのデータが出そろってきた。国連の気候変動に関する政 府間パネル(IPCC)の第1部会は、21世紀末の地球の平均気温が20世紀末比で最大で6.4度上がると予測している▼気温が上昇すれば海面が上昇して、陸地が減る。同部会によれば、海面は今世紀末までに最大で59a上昇すると予想している。陸地が減れば樹木も減る。するとCO2 の吸収が減り、一段と温暖化が進む「負の連鎖」が起きると警告している▼気温の上昇は実際に観測されている。気象庁によれば、2006年の世界の年平均気温は平年よりも0.31度高く、統計を開始した1891年以降で3番目に高かった。国内では、新潟など 15地点で1月の降雪量が観測史上最も少なかった▼京都議定書の第1約束期間が来年から始まるが、日本のCO2 排出量は減るどころか増えている。そこで、発電用の自然エネルギー供給量を2014年度までに今の3倍に高めるなどの政策がとられている▼気になるのは温暖化ガスの大排出国アメリカの動きだ。IPCC報告に対しとくに声明などは出さなかったが、ブッシュ政権の消極姿勢に対して地球温暖化の危機を訴えて回るゴア氏を追った映画「不都合な真実」が話題を呼んでいる。アメリカが変わり、日本も大きな影響を受けることになるのか。

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2007年1月

 スギやヒノキの花粉に悩む人たちにとって、この春は多少とも息抜きできそうな気配だ。環境省が「飛散量 は平年以下になる」との予測を発表した▼昨年春も比較的少なかったのだが、それに続いて今春は鹿児島など一部地域を除いて平年以下から4分の1程度になるという。もっと詳しく言うと、関東甲信越地方は平年の4分の1程度。東北南部や北陸、東海、近畿は25〜60%、中国、四国は50〜80%、九州は平年並みかやや少ない程度、北海道と東北北部は平年並みという▼飛散が少ないという根拠は、スギとヒノキが花芽をつける7月の日照時間が全国的に短く、生育不順になったためという。少ないとはいえ、用心に越したことはなかろう▼これらの花粉が飛び始めるのは早い地域で2月10日ごろ。比較的遅い東北、北陸などは、3月になる。花粉症の予防は、花粉の暴露を防ぐことと、薬物による予防がある。後者は基本的には治療と同じである。暴露を防ぐ方法は、かなり知られるようになってきたが、要は花粉情報に注意し、飛散の多い日はできるだけ外出を避ける▼外出するなら、マスクやメガネを使う。マスクは、ガーゼよりも不織布のもの。メガネは、花粉用のものもあるが、普通のメガネでも目に入る量は半分に減る。帰宅したら服や髪を良く払い、洗顔、うがいをし、鼻をかむ。

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