暮らしと環境・エネルギーの情報紙「燦」(サン)

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大樹小樹

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2006年12月

 車の燃費がさらに良くなることになる。国土交通省と経済産業省が、現状よりも2割以上良くすることを義務づ ける新基準をつくる方針を決めた。現状でも、国際的に見て高い水準だが、京都議定書が定めた温暖化ガス削減目標達成のためには、さらに厳しい基準が必要と判断した▼現行の燃費基準は99年に実施された。ガソリン車の場合は、車両重量ごとに9クラスに分けて、2010年度までに95年度実績よりも平均約23%改善することをメーカーに義務づけている。すでに、すべてのクラスの平均値で目標を達成している。そこへ、京都議定書の発効である▼国土交通省は、「自動車の燃費性能の評価及び公表に関する実施要領」に基づき、ガソリン乗用車、ディーゼル貨物車など9種類に分けて定期的に公表している。それによると、今年10月12日現在、ガソリン乗用車(普通・小型)ではトヨタのプリウスが1gあたり35.5`となっている▼これをさらに、2015年度をメドに20〜25%改善しようというのだから、メーカーはたいへんだ。巨額の開発投資を強いられることになる。部品メーカーしかりだ。一方で、燃費の良いハイブリッド車の普及が促進されるし、国際競争力もさらに強くなる▼いずれにしても、ユーザーとしては、燃料費を節約したうえ、環境にも貢献できることになる。

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2006年11月

 移植医療の現場が混乱している。国内では初めて臓器の売買が表面化した。と思ったら、今度は腎臓の病気 の患者から摘出した腎臓が別の患者に移植された▼移植用臓器の売買は、事実とすれば臓器移植法違反になる。この法律では、対価を得て臓器を提供するのはもちろん、斡旋することも禁じている。病気の患者から摘出した臓器を別の患者に移植するなどは、法律をつくる段階で多分予測していなかったろう▼売買、病気の腎臓の移植はいずれも、愛媛県を舞台に起きた。生体腎を買ったのは59歳の男性で、提供したのは同じく59歳の女性。仲介したのも59歳の女性だった。提供者は現金や新車の乗用車を受け取ったとされる。警察はまず、移植を受けた患者と、仲介者を逮捕した▼腎臓を提供した女性は、母親も腎臓病である。提供を受けた男は、同情につけこんでしつこく迫ったという疑いもある。手術をした病院にも問題があったとされる。病院自体、日本臓器移植ネットワークに加入していない。そこで、より望ましいとされる死体からの臓器提供を受けられず、生体腎移植を行っていた▼この件とは別に、名古屋市の病院で移植用に保管されていた腎臓2個が誤って廃棄された。こうした一連のできごとが、やっと根づき始めようとしている移植医療に水を差す結果になったことは否めない。

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2006年10月

 酒酔い運転事故の被害に遭って意識不明のままでいる人の家族の訴えで、裁判所が、運転していた男に約3 億円の賠償金の支払いを命じた。4億1千万円の請求に対し、介護料約1億3400万円、逸失利益約7200万円、後遺症の慰謝料約3200万円などを認定した。画期的な判決ではある▼それにしても、最近の酒酔い運転事故の多発はひどい。事故がたび重なると、報道する側も強い関心を持って記事にするということはあるにしても、あまりに悲惨な大事故が続いていることは否めない▼沢山飲んだ客には代行運転の割引券を渡す店も出現したが、酒酔い運転を根絶するためには、運転者のモラルの向上に取り組むのはもちろんのこと、取り締まりの強化と罰則のさらなる強化があっていい▼ところで、酒を飲んだらエンジンがかからない車の開発が内外で加速しているという。運転席に座って息を吹きかけ、アルコールが検知されなければ運転可能となるなど、手法はいろいろあるようだが、こういう車を開発しなければならないというのも情けない話だ。しかし、これはこれで事故防止の一助にはなる▼アルコールが検知されなくてイグニションがかかったとして、音楽カセットを取り替えるためにわき見運転をして園児の列に突っ込んだりする。こういうのはどうやって防止すればいいのか。

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2006年9月

 冥王星が、惑星ではなくなった。国際天文学連合(IAU)が多数決でそのように決めた。冥王星が1930年にアメリカ人によって発見されて以来、76年ぶりの変更である▼議論の経過はかなり詳しく報道されたので、関心を持った人も多いが、当初は、これまで9つだった惑星を12に増やす案が検討された。小惑星セレス、冥王星の二重惑星とされたカロン、そして第10惑星を、惑星の仲間に入れようという案だったが、議論が二転三転したのちに1個減らして8個とすることが決まった▼惑星の地位を失った冥王星は、矮惑星というジャンルに入れられることになった。別の案で惑星の仲間に入れることが検討されたセレスや第10惑星もこの中に入れられた▼惑星と矮惑星の違いは、太陽の周りを回っていることと、十分重いため球状であるという点は同じだが、軌道の近くに衛星以外の天体があるかないかで区別する。冥王星は近くに他の天体がたくさん見つかっているため、矮惑星となることになった▼ところで、天文学は、いうまでもなく科学だ。科学とは、真理を探究する学問であって、それを多数決で決めてもいいのかという議論があった。確かに、数日間の会議で結論を出すのは早急ともいえるが、時間をかけても、結局は実験、この場合は観測結果に最も合った理論が生き残るのだろう。

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2006年8月

 「安全」の問題が改めてクローズアップされている。プールの給水孔に子どもが吸いこまれて亡くなったと か、湯沸かし器による一酸化炭素中毒死などである▼給水孔の柵はボルトで締めるべきなのに、針金で留めてあったとか、湯沸かし器は、わざわざ安全装置が働かないように「改造」していたなど、信じられないできごとが続いている▼プールの柵については、異常が見つかった時点で立ち入り禁止が徹底していれば、事故は防げたはずだ。しかし、今となっては、そう言ってみても始まらない。湯沸かし器に至っては、まったく言語道断と言わざるを得ない。安全装置が働くと、確かに面倒ではあるが、本来は、事故死などを防ぐためにつけてある▼安全というキーワードを考えると、原子力発電所は何重もの安全装置を備えている。これは当然のことだ。その原子力がタービンの故障によってストップしたため、代替火力用の燃料調達に莫大な費用がかかるという話が最近、報じられた。皮肉な見方をすれば、この件で原子力のありがたさが改めて見直された▼地球温暖化防止などの観点からは、原子力に勝るものはない。加えて経済的優位性も実証された。原油高は当分続く。アメリカがスリーマイル島事故以来、中断していた建設を再開した。ヨーロッパも少し風向きが変わるのか。

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2006年7月

 少子化の議論が、にわかに高まっている。政府・与党の対策案がまとまったのと相前後して人口動態統計や 国政調査速報が出るなどして、関心を集めた▼一人の女性が生涯に産む子どもの数である合計特殊出生率が2005年は1・25で、04年の1・29を大幅に下回った。一方、05年10月1日時点の65歳以上の高齢者人口は総人口の21%となった。世界最高水準だ。このままでは、子どもは減る、老人は増えるで、年金制度も怪しくなる▼今回まとまった「新しい少子化対策」は、新生児から大学生に至るまでの間を4つの期間に分け、それぞれについて支援策を示している。たとえば、乳幼児期を過ぎて小学校に上がるまでは、育児休業や短時間勤務の充実、普及などをあげている▼このこと自体は、正しい。問題は、それをどうやって実現するかだ。すでに次世代育成支援対策推進法が施行されるなど、法整備は進んではいるものの、現実には、産休や育児休暇が取りづらく、第1子の妊娠と同時に退社して行く女子社員は多い▼小学校に上がってからも問題は多い。下校中に犯罪に会う恐れもある。実際に、子どもが学齢期に達すると同時に退社する女性は多い。結婚件数が昨年半ばから増加に転じていることに期待する向きもあるが、それが直ちに出生率の上昇につながると見るのは少し甘くはないか。

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2006年6月

 公共の場所での禁煙が加速している。JR東日本は来年3月をめどに東北、上越、山形、秋田の各新幹線を全面 禁煙にする。特急列車についてはすでにJR北海道とJR四国が全面禁煙にしており、JR東日本も全面禁煙にするが、新幹線は初めてだ▼JR東日本によると、禁煙化に関して寄せられた意見の中で反対は3割。7割が賛成だという。禁煙車両への煙の流入は困るという利用客もいる。JR東海ではすでにデッキでの喫煙を禁止している。JR東日本は、喫煙者に対しては、ホームに喫煙室を増設することで配慮するそうだ▼公共の場所での禁煙は2003年5月に施行された「健康増進法」が根拠になっている。第25条で、多数の者が利用する施設の管理者に対して、受動喫煙を防止するために必要な措置を講じることが義務づけられた▼鉄道に限らず、公共の場所での喫煙を禁止するところは増えている。一方、喫煙率についても、男性の喫煙率は年々低下している。それでも欧米の2倍だ。ただ、女性の喫煙率は年々増加の一途をたどっている▼たばこは、さまざまな病気の原因だが、とくに密接なのは肺がんだ。今のところ、男性に比べ女性の肺がんは少ない。しかし、女性の喫煙率が上がっていくとどうなるのか。もうひとつ気になるのは、未成年の喫煙である。やっと自販機対策が整いつつあるが。

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2006年5月

 アスベストの健康被害問題でクボタが旧神崎工場の周辺住民に救済金を支払う制度を導入したことが大きな 波紋を広げている。クボタに続いてニチアスと、子会社の竜田工業も同様の制度を導入した▼クボタの場合は、兵庫県尼崎市の神崎工場でアスベストを扱っていた1954〜95年に、工場から1`以内に1年以上住んでいたか、職場や学校に通勤していた人で、アスベストを扱った経験がない、などの人が対象。最高4600万円を支払う▼ニチアスの場合は、奈良県王寺町のニチアス王寺工場や同県斑鳩町の竜田工業などの周辺400b以内に71年以前に1年以上住んでおり、アスベストを取り扱った経験がないなどが条件で、チチアスが1500万から3千万円、竜田工業が1千万から2千万円を支払う▼アスベストの健康被害については国が新法、石綿健康被害救済法を急遽つくった。しかし、健康被害のうち中皮腫と肺がんのみを対象にしており、石綿肺などは除外していることと、金額が少ないことが批判の対象になっており、訴訟の動きもある▼クボタなども、新法で認定された人とその遺族に限定しており、その意味で完璧といえるかどうか議論のあるところだが、新法に比べて金額は大きい。いずれにしても、これを機に補償をめぐる議論が高まることは間違いない。

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2006年4月

 米国産牛肉の輸入再開が近いというムードになってきた。3月末に2日間にわたって開かれた日米専門家会 合で「一定の共通認識」が得られたという評価がほぼ定着した感じがある▼これほど曲折だらけの問題も珍しい。日本政府が久しぶりに輸入再開を決めたのは去年の12月12日のことだった。ところが、今年1月20日に再び全面停止したのだった。理由は、周知のとおり、脊柱が混じっていたというものだ。脊柱はBSEの病原体プリオンが蓄積しやすい特定危険部位だから、全面停止の判断は当然だったといえよう▼ところで、今回の「一定の共通認識」とは、脊柱混入牛肉を出荷した二施設が、BSEの感染リスクがないとされる子牛を専門に扱う施設だったこと、他の一般的な処理施設と違って牛の解体場所と加工場所が分かれているといったことなどが判明したというものだ▼要するにアメリカ政府は「全体として安全性が確保されている」と主張しているわけだが、ユーザーとしてどこまで信じていいのか。日本政府は消費者代表への説明会を開くなどして、アメリカと輸入再開時期などを詰める協議を開くという▼少し引っ掛かるのは、小泉首相が6月訪米の線で調整が進められていることだ。安全性確保が再開の前提であり、首相の訪米とは無関係であることを再確認しておきたい。

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